後書き

― 西暦2019年4月10日


― ボルデュック領と同じく春の訪れの遅い地




 王国シリーズスピンオフ2「細腕領地復興記」の本編を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。特に応援、フォロー、レビュー、コメント下さった方々、感謝の気持ちでいっぱいです。ご意見ご感想、真摯に受け止めております。皆さまの評価、反応がとても励みになります。


 王国シリーズ第三作目「奥様は変幻自在」を書いている時にルーシーとステファンをくっつけることは考えていたのです。本当は「奥様」の中に彼らの話も入れてしまうことも一瞬頭をよぎりました。しかし、作者にとってはアナとジェレミーの二人を書くだけで精一杯、読者の皆さまにとっては彼らのドタバタを追うだけでお腹いっぱいだと気付き、スピンオフとして温めておくことに決定しました。


 まずステファンの年齢を決めるのに少々悩みました。あまりにルーシーと離れすぎていても良くないし、かといって若すぎても領地経営の経験不足だろう、と言うことでルーシーとは11歳差の初対面時25に決定しました。


 さて、王国シリーズも第三作から登場人物が半端なく増えてきて、ステファンさんは「奥様」でも「蕾」でも結構重要な役割を負っていたとは言え、何故か影が薄い気の毒な方でした。あまりに誠実で常識的で穏やかな性格の人なので、きっと他の強烈な登場人物達が目立ち過ぎているせいかと作者は一人分析しています。まあそれに今の時点でシリーズ作品中一、二を争うお行儀の良い!男性主人公でもありますしね。


 ルーシーの恋について「奥様」ではステファンさんが婚約破棄をして、ルーシーは王都に出て貴族学院を卒業して姉夫婦を羨ましがるところで終わりました。その次の作品「蕾」ではアントワーヌの結婚式でステファンとルーシーが付添人を務めるというところしか書きませんでした。


 ステファンの地道な活躍も彼の古風で真摯なルーシーへの愛もきちんと皆さんに知って欲しい、という思いが日々膨らんでおりました。「奥様」執筆時に構想は早くから練っていたこの話ですが、公開はやはりシリーズ完結を待つことにし、長いこと熟成させておりました。先に「王子と私のせめぎ合い」を公開することにしたのは、少々重いイメージの第四作「蕾」のすぐ後は、より軽めな作風の「王子」で気分転換を図りたかったからです。


 時系列的に第三作「奥様」と第四作「蕾」と同時進行の物語ですから、再びシリーズ作間の辻褄合わせに苦しむことになりました。この時点ではアナとジェレミーの関係はどこまで進んでいるとか、アントワーヌは今何をしているのだったかとかですね。それでも「奥様」や「蕾」を思い出しながら、最後まで楽しく書けました。


 「奥様」では終始空気の読めないダメパパでしかなかった父親ジョエルですが、今作ではルーシーの気持ちに早くから気付いていたり、彼女を応援したりと少し花を持たせてみました。お茶目な彼、やっぱり憎めないですよね。


 あとはそうですね、ルーシーの兄テオドール君です。「奥様」ではあまり台詞もなく口数少ない感じだった彼ですが、今作ではアナの居ない所でかなり饒舌じょうぜつで歯に衣着せずポンポンと言っています。


 それからドウジュの活躍も忘れてはいけません。作者は神出鬼没で便利なドウジュを使うのが大好きなのです。ステファンが婚約破棄することは「奥様 第四十一条 豊作」に既に述べていました。正にドウジュが暗躍してくれたお陰でステファンさんは助かりましたね。


 こういった本編の裏話的なところもスピンオフならではの楽しみです。


 最初はルーシー視点で彼女の一人称でお送りしたかったこの物語です。実際ほとんどの場面は彼女の目線で物語は進行していきます。しかしドウジュとアントワーヌの画策が書きたかったので結局は断念しました。


 さて、今作も頑張って各話の題名に趣向を凝らしてみました。早くからお気づきの方もおられたと思います。これはこれで楽しかったのですが、題名を決定するだけでまたまた結構な時間を取られてしまいました。しばらくは凝った題名をつける余力はないかもしれません。


 この後完結後の恒例のおまけとして『主要でない登場人物紹介』と番外編を公開します。よろしかったらそれらもお読みいただけると幸いです。



           合間 妹子

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