10.第4アース
「第4アースに無事とうちゃーく」
シルヴィアの体から力がスッと抜けた。
帰るときにもこれか。ヤマメさん本人のものならもう少しましなんだろうか。
相変わらず、スイセイは砕けた氷のままだ。ベイズが操縦席から現れて、スイセイを見る。そのあとにシルヴィアを口を開けたまま見る。
「君だぞ。」
「うーん、ぼくはもどしかたわかんない。マモリさんにれんらく!」
「はぁ、」
ベイズは片手を念晶に組み替えて、マモリに連絡を取った。
恐ろしく早いな。
「ねっせればいいって」
「君がやれ」
背もたれによじ登って、後ろの席の方に飛び移る。ベイズは指先を赤くしてから、スイセイに一つずつ触れた。溶けてはいるが、スイセイの頭が出来上がった。次に胴、足、腕、とやはり溶けているができた。
「ええっと、つぎは」
「冷やせ」
そうシルヴィアが指示すると、ベイズの指先は白くなった。
少しずつスイセイの形が元のあるべき姿に戻っていく。
「ふぁあああああああああああっ 死んだかと思った!!もう駄目だと思ったあ」
「もう少し冷やしてやれ」
「私も普通生物でできている体がよかったなああ」
ベイズは手を休めず
「この星の生き物の体は大半が水ですよ」
「ええっ」
「今、星のどこらへんなんだ。」
「うみのうえ。」
マモリによる念晶を通しての説明によると、この第4アースは球体でありながら、平面的な移動方法しかできないという。なんでも、一か所、絶対に通ることができない空域、海域があるからだとか。
ベイズが乗り物の天井を開き、その域がある方向を指さす。
どの雲よりも真っ黒な雲がその方向にはあった。
「なんだあの雲、ライトビでもあんなのつくらんぞ」
『あの雲のお陰でこの星はこの星の原子の姿を知れたのだ。起こそうと思えばエバーワールドやバイサーバでも可能だ。恵の雲だぞ。もちろんあれで絶滅した種もあるが』
ベイズの片手の念晶を通してマモリがしゃべった。
『で、だな。まずそこから北東のほうにある大陸に向かってくれ。そこでよく師の目撃情報がある。二人は多少のシェイプシフトはできるな?ならベイズのポケットに入るくらいの小動物になってくれ。』
「本気か?」
シルヴィアが念晶を睨みつける。スイセイは服の乱れを直しながらシルヴィアの顔を見る。
『正直、君たちの変身でどこまでこの星の住民となじめるか分からない。だからベイズにいったん全て任せる。防御にでるときは君たちに任せる。そのあとベイズに記憶を消させてくれ。そろそろ次の仕事をしに行かなければならない。またあとで』
シルヴィアは、腕を組んだ。
「スイセイよ、どの動物がいいとおもう?」
「マシマロですかね。あれなら、簡単で、ぬいぐるみにも見えますし。」
「じゃあそれで」
シルヴィアは一つ大きく深呼吸すると、赤い髪飾りのついた白い手のひらサイズの生き物になった。
「マシマロならトレードマークはそのままだからな」
スイセイも小さくなったシルヴィアに微笑んでから、下睫毛の下の2本の入れ墨が残った白い生き物になった。
二人とも顔はこれである(・ω・)(・ω・´)
『かぶせ、わすれないようにな』
その頃、エバーワールドの日は傾いて、城上町に差し込む日はもうわずかだった。
昨日は式典とその始末でばたばたとしていたため、城上町の住人達とコロが王になったことを分かち合うことは出来なかったため、今日の夕方から城上町住民のみで食事会を開いた。
食事を作るガロウはやはり、どこか空虚だったが、できた食事を喜ばれると微笑んだ。
ガロウ一人だけで、10人分の光を賄えるほどになると、マルーリがコロを呼び出した。マルーリの手には昔フヨウからもらったランタンがあった。
ああ、これは長くなるやつだ。
やはり町の端まで行くと立ち止まり、マルーリは話し始めた。
「昨日、スイセイと一緒にいたミキ・ツルホのこと覚えてる?」
「あー、えと、風呂敷の髪が白と赤のめでたい感じのこ?」
「そう」
曇りガラスが乱反射して、眩しいので、マルーリの表情は読めないがどこかおびえているように感じた。
「ミキはドラコスネイの方からきてるんだけどね、今日は帰ってきてないっていうんだ。スイセイに会いに行くって言ったきり。今日お前はスイセイにあったんだろ?」
コロは黙ってうなずいた。
「なんでミキがスイセイと一緒にいたかわかるかい」
「え?」
「スイセイがミキを守るためだ。それが遂行されなかった。」
「…それって、ツキヨにオーブにされたってこと?」
「そうだ。」
「わ、私そんなつもりじゃ…」
右肩に手を置いて、マルーリはあやすようにコロの後ろに腕を回した。
「確かにお前の計画は、いいと思う。だが、了承を得ることほど大事なことはない。それなしに行動してもいいのは先に未来を見た人物だけだ。いいね。まあ、そういうギフトもツキヨの手の中にあるんだが…。使い道を間違えると誰からも信頼を得られなくなる。王族は心を利用する。決して悪用してはいけないよ」
城上町のパーティーにはマモリも出席していた。
「ガロウさん最近眠れてるんですか?」
「ここ十年ぐっすり眠ったことないよ。ヤマメの膝枕が恋しい」
おお、っと感想にはならないが、ガロウの気持ちは受け取った。さきほどからベイズとつながっている念晶がうるさいが今は祝いの席なので扱わない。
「あそこまで体が肉で構成された人もいませんからね」
「ドラコスネイの職人もあたって、枕を作らせたがヤマメに勝るのは一つもなかった」
ガロウの髪の火は煌々と輝いているが、それはガロウの気を吸って燃えているようにも見える。それくらい目の下の隈がひどい。
「肉を作るのはホムンクルスの技術が必要ですけど、あれはダメですからね。絶対手を付けたらだめですよ!!どこに連れていかれるかしれたもんじゃありません!!そのせいで、緑の髪のエバーワールダーは全滅!!」
「いや、わかってる。わかってるって」
ガロウが元気そうな顔をしたあと、端の方から大きな気配がした。
「コロ?」
「マアアアアアモリ!!はやく、スイセイ達につなげて!!」
顔をくしゃくしゃにしたコロがちかずいてきた。客が全員コロを向く。豊かな黒い長髪も台無しで、涙で顔に張り付いている。
さらに後ろの方ではマルーリが口をへにゃっとまげて、手を合わせている。ごめんなさいだ。
ともかく、うるさかった念晶を取り出した。
「あ、やっとつながりましたよ」
右ポケットの方からスイセイマシマロが顔をだして、左ポケットにいるシルヴィアマシマロに声をかけた。
「やい、マモリ、大陸の港に着いたぞ。今ベイズが体を乾かしているところだ。具体的な指示をしろ」
『えっ、なんかシルヴィー姉が難しいこと言ってるけど』
マモリではなく、コロが答えた。
『分かった、ええ、と。墓場のある町を重点的に探してくれ。特に無名墓場が多いとこを。それから私たちも報告せねばならないことが』
向こうの方で念晶が別の人物にわたる音がした。
『スイセイさん、言いにくいんだけど』
えっ私?とスイセイが驚き跳ねてから、コロが声を抑えて言った。
『ミキ・ツルホさんがオーブにされたかも』
「えっそ、そんな。今日は会う約束していなかったし、なんで」
『それは分からない。とにかく、ドラコスネイの人からは図書館へスイセイに会いにいったということと、戻ってきていないという連絡だけが入っているんだ』
マルーリの声だ。マルーリが続ける。
『もしかしたら君がいないことで、さらに犠牲が出るかもしれない。その為の対策をこれからこちらでとる。だから君たちはその星で仕事をこなしてくれ』
場面は戻って、コロの頬をマルーリがつねっている。
「お前も、私も、急ぎ、すぎたな」
言葉の途切れ途切れで、引っ張る力を強める。だいたい、つまんでいる箇所の握力はスッポンがかみついた時の10倍ぐらいだと思ってくれたらいい。
「いひゃい、ほんとごめんなひゃい」
「私もねえ、君に、仕事、譲った、とたん、こうなるとは、おもって、なかったよ」
爪すらたてていないが、コロのゴムじみた頬はだんだんと裂けてきている。
「マルーリさん、それくらいにしてあげて…。ほんと、師みたいな口裂けになっちゃ
う」
「そのほうが、都市伝説の、殺人鬼、みたいに、なっていいんじゃないか」
「ひいいいいい、ごめんなひゃいいいい」
マモリが仲裁に入るが、マルーリは力を緩めない。
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