ドラコスネイより
生命が存在しているこの星も、海風はべたつく。ホテルで会った海の一族よりは爽やかな香りだが。
港町ドラコスネイ、計画的に作られた町で、そこにある小屋はす全て移動式。現在小屋は全て避難という形で船着き場から遠く離れたところにおかれている。私達は船着き場にいた。
「いいか、プランAは、私が会話することで丸め込む。その後、マモリの分解術とフヨウのオーブ化だ。プランBは…」
そうやって、王が作戦の説明をしていた。
「まあ、上手くかなかった時の応用ぐらいに考えていてくれ、自信がない。解除」
そういって、手を叩いた。この作戦に参加しているのは、ガロウ、マモリ、ヤマメ、フヨウと王。私は置いたままにしておくのは万が一の時危険だろうということで、ついてこらされた。
ヤマメは体をならすように体操している。
「コロは特に逃げないといけなくなるだろうから、少しは動かしたらどうだい」
「今までより体が軽いから問題ないさ」
ガロウの髪は緊張しているのか青い炎だ。ガロウは私が逃げるときに、一緒に移動する。
こちらが見ていることに気づくと、いつものオレンジ色に戻った。
「問題ない。大丈夫」
「信頼してますよ」
マモリは、帰ってきた時とは違う服に身を包んでいる。あの時は正しく魔法使いという感じだったが、今は運動着姿でみすぼらしいとすら言える格好だ。手袋は相変わらずで、義手の動きを確めているようだった。王を見返した。
「王は、不便なお力をお持ちのようだ。だが、身体に異常は見られない。平凡に健全で、この計画にふさわしい。だが非情さが足りない。」
「だな。マモリの言う通りだとも。」
「次の王は命令を課せる王が望ましいですな。働かせるという代償を伴うものではない。」
何故か私に向かってマモリは言った。
「その時はお呼びください」
船が一隻船着き場に近寄ってきた。
「ツキヨの奴、クゥテンに頼まなかったのか」
クゥテンとは読めない船は強固に固められた箱を乗せて、こちらに迫っている。
「早速予想外か。あいつらなら、頼れるクゥテンに船を遣わせると思っていたんだがな。フヨウ」
「いや、俺はクゥテンに任せたって聞いたんだ。俺は悪くねえ!」
マモリがフヨウに言った。
王は、半分諦めた顔で船がつく位置に行った。箱を乗せた船が静かに止まった。箱が開き中にいる人物の姿を明らかにした。
ロイスは冷たい色の髪を持っていて、眼光はするどく、猛禽類の様な目。頬には目から垂れるように蔦上の模様が描かれている。
ロイスは動物が威嚇するように、低く王に向かって唸った。
「何故、私をあの箱に入れてここにこさせたんだ。」
「君が危険だと聞いてね。本当はクゥテンに任せるつもりだった。」
ロイスは王の言葉を区切って
「あいつは別の奴についた。あそこに帰ってきてからな。セキウはどう思うだろうな。だからツキヨが手配したこの低俗な船に乗る羽目になった。」
「我々は、一度異星人との関係を話し合う必要がある。私の城に向かう。」
また遮って
「お前の魂胆は分かっているのだ。私を丸め込もうとしているのだろう。いい加減にしろ。この間抜け。」
ロイスの手元が光った瞬間、王の背から同じく光が延びた。
まばゆい光は刃物から発せられるオーラに似たものだ。
「そこのガラス目。お前匂うぞ。内臓だ。けがわらしい、異星人の生命を維持するために詰め込まれた肉だ。づたづたに引き裂いてやる。」
そういった途端、船着き場の橋からこちら側に飛び移った。それに対抗してマモリが私の前に躍りでて、何か、赤色をした球体を会わせた両手から出した。
見事、球体は的中してロイスは吹き飛んだ。
「二人は逃げろ!」
「行こう」
ガロウが私の手首を握り、山の方向に走り出した。
足は異常に軽やかで、腰から下が無くなった用にすら感じた。
後ろを振り向くと、マモリが追い討ちに呪文を唱え始めた時。ロイスは地面を蹴り、私ではなくマモリに向かって走り出した。ロイスの持った刃物は刃が長いものに変わり、次の一撃を加えようと構えた。マモリの詠唱は終わらず、ロイスの刃がマモリの左腕に触れた。詠唱は止まり右腕を突きだしたままのマモリの両足を一刀両断した。
マモリがその場に倒れると、私達の方向に向き直した。
私たちが林の中に入った頃だった。
一心不乱に逃げ続けていると、木々がなぎ倒される音が近づいてきていた。それと一緒にフヨウの声がこだました。
逃げる道はまっすぐに山に向かって延びていたが、背後には道はなく、木だけだった。
山を登り、ホウライの洞窟がある付近に差し掛かったとき、ドラコスネイの方向からまばゆい光、というより力の玉の様なものが森を数平方メートル程飲み込んだ。
「あれはマモリの大分解だ。二人が巻き込まれていなければ良いが…」
不安が山を登る度大きくなるのを感じた。何より、ロイスのギフトを聞いていなかったのが不安を大きくさせた。
あの光の後、森がざわめくことは無かった。いつもの様に静かに風に揺れていた。
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