第359話 桟橋見学
イングマルは駆け足で荷馬車にすぐに追い付くと自分の馬車に飛び乗り何事もなかったようにしていた。
エドモンドもエミリア夫人もイングマルを見て「大丈夫だったの?」と聞いた。
イングマルは「ええ。お騒がせしました。商売してると何かとトラブルが起こるものでいつものことです。」と言った。
エミリア夫人もエドモンドもイングマルを見ながら「ふ~ん」と感心していた。
チンピラを叩きのめすのは簡単な事だがこれから桟橋を中心に商売を広げようというのに近所の農民が暴力を受けたという噂が広がっては後々やりにくい。
イングマルはこれからはなるべくトラブルを円満解決しようとあれこれと試行錯誤している。
今までならチンピラ相手に金など絶対に渡さないのだがわずかな金でトラブルを回避できるならと試してみたのだったが結局無駄に終わった。
単に火に油を注いだだけのようだが話し方だけでも随分違ったものになったかもしれない。
最近イングマルはコミュニケーション能力が人と接するに当たっては一番重要としみじみおもっている。
イングマルにとってはもっとも苦手な分野であった。
だが商売を続けていくには避けては通れない事である。
昔と比べたら随分と話せるようになったと思うが苦手な事に変わりはない。
絶対の信頼と憧れを持っていた叔父さんのようになりたい、そう思っているが時々「自分はもしかして商人には向いてないのかも?」と思うこともある。
自分は何なんだろう?何が一番ピッタリなのか?
商人?猟師?鍛冶師?船乗り?傭兵?剣士?弩兵?
それともただの人殺し?
どれも当てはまりそうで、どれも違うような?
あれこれ考えているとエミリア夫人が声をかけていた。
「ねぇってば?どうやって桟橋建設の許可をとりつけたの?何代も無理だったのに?」と聞いた。
イングマルは「ははは。それはあれです・・・・商売上の秘密です。」と言ってごまかした。
そうこうしているうちに石切場が見えてきて石切場の桟橋にたどり着いた。
エミリア夫人もエドモンドも「おお!本当に桟橋が出来ている!」と言って驚いていた。
イングマルは「どうぞこちらに、船長に紹介します。」と言って二人を皆のもとへ連れていった。
桟橋では船員たちが重い石を担いで船に載せていたがまだグレートパッション号に半分位しか積めていなかった。
船員たちは重い石運びでやる気が出なかったがエミリア夫人を一目見るなり急に張り切り出した。
イングマルはアントニオ船長、オットー船長、そしてエーギルじいさんに「こちらは修道士のエドモンドさんと農家のエミリア夫人です。
お二人とも桟橋見学とエミリア夫人には早速穀物を売ってもらいました。」と言った。
船長たちは「それはそれは、どうもわざわざありがとうございます。
時間はありますでしょうか?ちょうど休憩にしようとしてたところなんです。
ご一緒にどうぞ。」と言った。
エミリア夫人は「ええ、どうもありがとう。」と言った。
イングマルは急いでテーブル替わりの箱や椅子を持ってきて帆布をテーブルクロスの代わりにして敷いた。
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