第353話 近所の農家たち
イングマルは教会の敷地の小さな畑を見ながら「どうすれば皆やる気が出るか?」というのを考えていた。
単純に「金をやるから石灰を撒け」と言っても仕事の範囲でしか作業しないだろう。
それではダメなのだ。
自分達が自ら望んでやろうとしなければ長続きしない。
それにイングマルは商人なのでただ負担するだけでなくちゃんと儲けが出ないといけない。
イングマルたちも得をし、農民たちも得をする。
そんなWin win な方法は無いものか?
イングマルは「誰かやる気のあるお百姓さんはいないのですか?」とエドモンドに聞いた。
エドモンドは「居るにはいるのだが・・・。」となんだか気まずそうであった。
イングマルは「それじゃ早速話を聞きにいきましょう。」と言ってエドモンドと再び馬車に乗り込んで出掛けた。
近所の農家さんらしいが荒れた農道をトコトコ行くと小さいお堂があって数人の男たちがたむろしていた。
男たちはイングマルの馬車をにらみつけ、エドモンドが乗っているのがわかると声をかけてきた。
「ようよう、誰かと思ったらエドモンドじゃねーか?修道士殿がまた後家さんのところに通いにいくぞ!」
「がははは!お説教で落とせると思っていやがんだ。結構なご身分だこと!」と言ってゲタゲタと下品に笑っていた。
イングマルは「あの人たちは何を言っているんです?」とエドモンドに聞いた。
エドモンドは「気にするな、あの連中はいつもあーなのだ。」と言いつつも歯を食いしばって我慢しているようだった。
イングマルは馬車を止めて彼らの元に行った。
エドモンドは「これ!相手にするんじゃない!」と後ろから声かけたがイングマルは知らん顔で彼らの前に行くと「何をしてるんですか?」と言って男たちの輪をのぞき込んだ。
男たちは酒を飲みながらサイコロ博打をしているようだった。
男たちは「なんじゃ?ガキ!あっちいけ!」そう言って追い払われてしまった。
男たちは「誰も相手にされないからガキを手なずけたのか?修道士さんよ?ゲハハハ!」と笑っている。
エドモンドは「さあ、早く行くぞ!」といいイングマルは馬車に引き戻され出発した。
イングマルは「彼らは何なんですか?」と聞いたがエドモンドは「あれはこの辺りの農民だ。」と言った。
イングマルは驚いて「あれが?日中から酒飲んでバクチ打って?僕はてっきり無宿人か農奴かと思いましたよ。」と言った。
エドモンドは「農奴のほうがまだマシかもしれん。この辺りの農民の若いのは大なり小なりあんな感じだ。」と言った。
イングマルはそれを聞いて「これは前途多難だな。」と思っていた。
エドモンドは「さあ着いたぞ。」と言って一軒の農家にやって来た。
エドモンドは「こんにちはエミリア夫人、ごきげんいかがですか?」と作業していた女の人に声をかけた。
女の人は「これはエドモンド修道士、ごきげんよう。今日はいかが成されましたか?」といってこちらにやって来た。
エミリア夫人はエドモンドと同じ位の年齢だがおばさんという感じはなく、しっかり者で男なら誰でも好きになるような魅力的な夫人であった。
エドモンドは「忙しいところを申し訳ない、実はこの者が精農家の話を聞きたいと申しましてな。」と言ってイングマルを紹介した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます