第342話 商機
ジェームスはようやく落ち着くと「そなたが忠告してくれたおかげで助かった。
このまま知らなかったらとんでもない事になるところであった。
援助の話はまだ話を聞いただけで契約も何も決まってはいないのだ。」と言った。
だがとりあえずしのいだとしても問題が解決したわけではない。
金がない事にはかわりなく、いずれ破綻するのは時間の問題で少し先伸ばしになっただけのことである。
ジェームスもすぐにその事を悟った様で暗い顔になった。
ジェームスは「しかし援助を受けないとなるとこの先どうしたものか・・・?」とつぶやいた。
イングマルは少し考えてから「ちょっと待ってて下さい。」というと屋敷を出て自分の馬車の元に行った。
馬車の荷台の隠しスペースから宝石類を取り出した。
これらの宝石は以前海賊退治をしたとき海賊が持っていた財宝の一部である。
イングマルはジェームスの元に戻って来ると宝石を渡して「この宝石を騎士や傭兵たちに分け与えて今回の仕事の褒美にすればいい。
宝石一個辺り金貨数十枚の価値はあると思うよ。」と言った。
ジェームスは驚いて「お!おぬしよいのか?!おぬしに渡すものが何もないが?!」と言った。
イングマルは「僕は商人ですから替わりの物があればそれを頂戴したく思います。」と言った。
ジェームスは「替わりの物とは?騎士の称号とかか?」と聞いた。
イングマルは笑いながら「まさか!僕は商人ですからそんなものは要りません。
そんなものよりお屋敷の北にあるスベン川に桟橋を作ることとその桟橋の独占使用権をいただけたら充分です。」と言った。
ジェームスは「桟橋を作る?あんな何もない所に港を開くのか?当家にそのような物を作る余裕はないぞ。」と言った。
イングマルは「お許しをいただけたら自分達で作ります、何も金はそれほどかかりません。
杭を打ち込んで板を渡すだけです。」と言った。
ジェームスは「それは良いがあんな何もない所に港を開いてどうするのだ?とても商売に向いているとは思えんが?」と聞いた。
イングマルは「この地はエストブルグ港から遠過ぎて何を運ぶにも都合が悪くエストブルグ港に物を運ぶだけで費用がかかります。
スベン川は水深も深く流れも緩やかなのでウチの船でも発着出来ます。
あそこに小さくても船着き場があればわざわざエストブルグを使わなくても直接ウチの船がアントウェルペン他の大都市へ物を運ぶ事が出来ます。
他より経費節約出来る分だけでも儲けが出ます。
桟橋が出来て商売が上手く軌道に乗り始めたら売り上げの数%を領主様に納めるようにすれば領主様にも良いかと思いますがいかがでしょうか?」と言った。
エストブルグまでは20km程離れていて重い荷物だと運ぶのに一日かかる。
さらにライオネル卿の屋敷に通じる街道からはエストブルグ港町に入るのに港の使用料が取られる。
ジム卿の嫌がらせであった。
港に着いてもすぐに船があるわけではなく何週間も待たされることもありその間の荷物の保管、滞在費用がバカにならずライオネル卿のお膝元では他よりも費用がかさんでいた。
ジェームスは「ちょ、ちょっと待っててくれ!主人に聞いてくる。」と言って慌てて部屋を出ていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます