第341話  金策






イングマルはジェームスの話を黙って聞いていたがこのバーデンス領がいとこのジム・ゲオルク・ジンペルトのものになるのは時間の問題ではないか?と思い始めていた。







ジェームスは「今は何もないが遠からず何とかなるかもしれないのだ。


それまで待ってほしい。」と言った。






イングマルは「何か当てがあるのですか?」と聞いた。





ジェームスは「ウム。実はなここだけの話だがセイント商会が全面的に援助を申し入れてきていてな。


それを受け入れようとしているのだ。



領地経営でも協力しくれるそうで、そうなれば我らも助かる。」と言った。







イングマルは驚いて「ちょっと待ってください!今セイント商会と申されましたか?セイント商会をご存知なのですか?」と聞いた。





ジェームスは少し驚いて「あ、ああ。もちろんだ、ヨーロッパでも指折りの大総合商社であろう?誰でも知っている。」と言った。













セイント商会は貿易を中心とした総合商社であるが実はその大元はプロビデンスという巨大ギルドでその富は国の国家予算に匹敵し自前の軍事力も保有している。


権謀術数にたけて目的には手段を選ばない。






いろんな国や貴族、領主相手に金を貸したりもしている。






だがその実状は貸した相手に返済不可能な金利を掛け、担保のかたに相手の領地、人民を実効支配してしまうものである。






事実上この商会のものになった国や貴族は幾つもあり、それらの貴族の婚姻もすべてこの商会の意向によって決まったりしている。






イングマルはそれらをかいつまんでジェームスに説明した。





イングマルは「それでも領民が幸福ならいいかもしれないけど最悪なのは平気で人身売買をするんだ!




支配された国や領地では村ごと農民が売り払われて知らない土地に移住させられたり、全然違う仕事に就かせたりしてしまうんだ。



少しでも美人の女がいたら当然のように商品として売られてしまう。




そんな連中なんだ!しかもライバルのジム卿の仲間なんだよ!そんなんと手を組もうっての?!」と聞いた。








ジェームスはイングマルの話を聞いて腰を抜かす程驚いて「そ!そなたの話はほ、ほんとうなのかッ!?」と叫んだ。








イングマルは「本当です!商人なら誰でも知っていることですよ。

一体なんでそんなんと手を組むことになったんですか?!」と言った。






ジェームスは大慌てで「い、いや!まだ決まった訳ではない!金策に奔走していたとき知り合いに紹介されたのだ。



だがそんな話は全く聞かなかったぞ!」と困った顔をしていった。












セイント商会は表向きは有名な貿易商社であるが裏の事情は船乗りや商人なら知っているが一般の人の耳には入りにくいようだった。





ジェームスは家のことで多忙を極め、細かい事まで把握していないようだった。







イングマルはジェームスの話を聞いて「どうやら敵は外堀を埋める手に出てきたようですね・・・・。」とつぶやいた。





ジェームスは「どういう事だ?」と聞いた。





イングマルは「ジム卿は息子を捕らえられて裁判にかけられて名誉を傷つけられた。



だから今度は財政から攻めて来たんですよ。




中々にしたたかで賢い手ですね。」と言った。






ジェームスは「そなたはこれもジム卿のはかりごとと言うのか?」と聞いた。






イングマルは「そりゃそうでしょう。金欠のところに都合よく援助してやるなんてタイミングがよすぎます。



キンケツ、いや、これは無礼な言い方でしたか・・・。」と言った。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る