第334話  船の所有者






クロードは多数決に持ち込み船長とギルド代表の地位を一気に得ようとしている。






だが以前にはいなかったイングマルが今はこの場にいる。







イングマルはクロードの後ろにいたがクロードの話を聞く気も理解する気も無かったので退屈しのぎに鼻くそをほじっていた。





クロードが演説中ずっとほじった鼻くそを丸めて弾いて皆の方に飛ばすので皆段々そちらが気になってきて鼻くその弾道を見逃すまいとしていた。





いったいどんだけ鼻くそがつまっているのか?鼻くそ弾はポンポン飛んで来る。





皆それを避けるのに必死だった。





やがて弾切れになってきたころクロードの話が終わろうとしていた。






イングマルは「終わったの?ホンじゃ船の編成を発表しま~す。」と鼻を赤くしていい、船の振り分けを言い出した。





「リバティコンティネント号の船長にはオットー・カーン、グレートパッション号の船長には前のままアントニオ・グリーンウッド、手に入れた新しい中型船はここにいるエーギルじいさんに任せます。



エーギルじいさんのことは知ってる人もいると思うけど今回船長を引き受けてくれる事になったのでよろしく。




三役はそれぞれ船長に・・・」と言ったところで「ちょっと待て!」とクロードが叫んだ。





イングマルは首を傾げて「何か?」と言った。





クロードはあきれたように「お前?!話を聞いて無かったのか?皆で多数決で決めると言っただろうが?!分からんのか?!」と怒鳴った。






イングマルは「はあ?」ととぼけた調子で答えたがその態度がますます気に入らなかったようでクロードは「この間抜けがッ?!多数決の意味も分からんのか?!」と怒鳴った。









イングマルはめんどくさそうに「あなたたちが何をしゃべろうと構いませんけど、このギルドでは関係ありません。



ゴッコ遊びならよそでやってください。」と言った。







それを聞いてクロードも皆も見る見る怒りがこみ上げてきて「何だとッ?!」と叫んだ。




イングマルは「皆さん何か勘違いをなさっているようですがギルドは単なる看板に過ぎませんよ。」と言った。





クロードはすかさず「だがギルドの運営は多数決で・・・・」と言いかけたがイングマルは「そんなにギルドが欲しいならどうぞ差し上げますよ。僕らは僕らで違うギルドを立ち上げるだけですから。」と言うとクロードはちょっと意外な答えが返ってきたので面食らっていた。




イングマルは続けて「ちなみにグレートパッション号の所有者はジョンたちでリバティコンティネント号と今度手に入れた中型船の所有者は僕ですから。」と言うと皆「アッ?!」と言った。





自分達には船の所有権がなく解散したら仕事を失うのである。




皆もどれだけ騒いでギルドという看板にすがっても船が無ければ無意味な事を悟ってしまった。






イングマルは済ました顔して「ちなみにクロードさん、あんたはクビですからこれで船を降りてもらいます。終わりです。


これまでの賃金受け取ってどうぞお帰りを。ごきげんようさようなら。」と言った。




「なッ!?」クロードは驚いて何か言おうとしたがイングマルは続けて「他にも気にいらん人は船を降りていいですよ。どうぞご自由に。



次からは給金は他のギルドとほとんど変わらなくなるのでここにいるメリットは無くなりますからね。



好きなもん同士で皆さんの言う理想の多数でも何でも作ったらいいんじゃない?船無しで。ハハハ。」と尻を叩きながら言った。





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