第332話 新しい体勢
イングマルはジョンと別れて病院を出るとエーギルの元に行った。
エーギルも鹵獲した中型船を見ていた。
イングマルは「エーギルじいさん、エストブルグに帰り損ねたけど今回の海賊退治で報償金が出るんだ、罪人護送の報酬とは別だから。」と言った。
エーギルは特に驚く訳ではなく話を聞いていた。
イングマルは続けて「じいさん、よかったらギルドに入ってこの船の船長にならない?じいさんなら安心して任せられるよ。」と言った。
エーギルはイングマルをしばらく眺めていたがやがて「お前はまだまだ青臭くて危なかしくていかん。修行が足りんな。
いいだろう、船長は引き受けよう。
だがギルドに入るのはやめておく、わずらわしいのは嫌だからな。
それに歳のこともあるしな、いつ身体が効かんようになるかわからん。
雇われ船長でいいならやろう。」と言った。
イングマルは「よかった。早速船を改造手直ししてメンバーも新しく雇わないと。」と言って今度はロイドたちの元に行った。
ロイドや他の5人のメンバーも皆いて早速今後の事を話し合うことにした。
話し合いと言うよりほぼ一方的な通達のようであった。
「ジョンとも話したんだけどこれまでの賃金体系も立場も全部見直そうと思うんだ。
均等割りをやめて階級に応じた年俸制にしようと思うんだ。」とイングマルは言った。
ロイドやオスカーも「それには別に異論はない、どこのギルドでもそうだからな。
ただ他のギルドと同じだと皆のやる気と言うかモチベーションというか?別にうちのギルドで無くてもいいという事になるんじゃないか?
これまでは均等割りで皆大金を手に出来たから成り手もすぐ集まったが従来と変わらんとなるとこれまでのようにやって行けるかどうか?」と言った。
イングマルは「その事なんだけど前に聞いたんだ。アラブの方でやってるやり方らしいんだけど航海の度に荷の売り上げの5%~10%のボーナスを船員たちに出すんだって。
そうすれば皆やる気を出して積み荷も大事に扱うようになるんだって。
うちもそうしようと思うんだ。年俸も他所より少し良くすればいいんじゃないかな。」と言った。
ギルドシーワゴンは創業者の5人、ジョン、ロイド、オットー、ウイリアム、アントニオが責任者である。
イングマルは今までギルドに雇われている用心棒という立場であった。
だが今後はギルドの責任者の一人となって運用していくことになった。
5人ともみんなイングマルの案に同意し船長以下航海長、舵手、主計の三役を設けた。
三役は船長が経験と能力を見極めて任命する。
これらは特別なことではなくてどこの船でもやっていることで、やはりその方が上手くいくということでもある。
今までのイングマルたちの方がイレギュラーだったようで上手くいかなかった。
従来のやり方にはそうなる理由がちゃんとあるということである。
それを変えていくのは簡単ではない事を改めて認識する一同であった。
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