第330話  事後処理




ギルド「シーワゴン」は速度の遅い中型船に合わせて警戒しながら航行していたがその後は海賊船に遭遇する事もなく無事アントウェルペン港に到着することが出来た。



ジョンは重症にもかかわらず「今後の事が心配だ!俺を外すなよ!」と叫んでいた。



ギルドをクビにされることを心配しているようだがイングマルは別にまだギルドのことをどうこうしようという気はなかった。





騎士たちには先に降りてもらい衛兵を呼んできてもらうように頼んだ。



真っ黒な大きな船が桟橋に入ってきて管理棟の職員はイングマルたちが再び海賊を捕らえてきたのを見て仰天し慌てて衛兵を呼びに行った。



70人あまりの海賊たちは全員縛られ数珠つなぎで船から下ろされ桟橋に座らされた。










町から多数の衛兵と馬車と騒ぎを聞き付けた野次馬がやって来て人々が見守る中、次々と捕らえた海賊達を連行していった。



重傷者と一緒にジョンたちも病院へ送られた。





海賊は「海狼シーウルフ」と「海死神シーリッパー」であることがわかるとその日の内に再び町は大騒ぎとなった。







大勢の人が見守る中、役人の船の検分が行われたが今回は目ぼしい積み荷は何もなかった。



イングマルも役人にくっついて船を見て回っていたが役人は「海狼シーウルフ海死神シーリッパーには懸賞金がかかっている。

二つ合わせて金貨200枚が出るだろう。」と教えてくれた。





イングマルはそれを聞いてからジョンを見舞いに行った。




命には別状ないとのことで人質になってイングマルにケガさせられた他の船員たちも無事であった。



病院にはすでに大勢の人が見舞いに来ていて「海賊を二度も退治した人」として英雄のような扱いであった。





「海軍でも出来なかった事を民間の商船がやったというのはまったく前代未聞だ!」



「しかも二度もいっぺんに二つも退治したなんてまったく信じられん!たいしたもんだ!」




「あんたはアントウェルペンの誇りだよ!」



皆ジョンたちを取り囲んで褒め称えた。




当のジョンはほんとの事を話す余裕もなく、ただただひきつった笑いを浮かべるしかなかった。




「私!前々から素敵な人って思ってたんです!」と看護婦さんに言われ鼻の下伸ばしているジョン。




「握手してください!」



ジョンはニコニコして「いいとも、いいとも。」といって手を出した。







イングマルだった。


手がつぶれるかと思うほどものすごい力でイングマルに握られた。





「ウギッ!いででででッ!って!お前?なにやっとんじゃ?!」とジョンは怒鳴った。






「いやー、一躍時の人ってのを見に来たんだよ。」とイングマルは言った。




ジョンは「クソッ、嫌味なやつめ!なにしに来たんだ?」と言った。






イングマルは「今回も報償金が出るらしいけど、今回は騎士さんたちとエーギルじいさんとで分けるからそのつもりで。」と言った。





ジョンは「ああ、わかってる。お前エーギルと組んだんだな・・・。」と言った。




イングマルは「組んだのは今回だけだけどね、このあとも頼もうかと思ってるけど、じいさんがどういうかな?」





「それよりギルドの今後の事だけど、船員たちは一旦全員クビにしようと思うんだけどどうだろ?賃金も均等割りをやめて一から見直そうと思う。」と言った。






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