第312話  海上戦3




イングマルは装填済みのクロスボウ20丁を盾のすき間から撃って行き、20人の海賊を射倒した。






イングマルはエーギルに手で合図するとエーギルは黙って海賊船から離れていった。



その間にイングマルは再びクロスボウを装填して行った。











海賊たちは獲物の船にはほとんど人が見えないので油断して体をさらして甲板やマストのヤードなど撃ちやすいところから矢を放って行った。


しかしあっという間に20人が撃たれてしまい、船の後部にいたロングボウの射手は大半がやられてしまい重傷を負ってしまった。


何でどこからやられたか分からぬまま海賊たちはただあっけにとられていた。






騎士たちは海賊たちと同じロングボウを使って何とか反撃しようとしていたがバンバン飛んでくる矢でそれどころではなく、盾から少しでも出ればすぐに矢が飛んでくる。


結局何もできなかった。





そんな騎士の横でイングマルはすばしっこく猫のように動き回り、嘘みたいな早さでクロスボウを撃ち、気が付くともう海賊船から離れていた。





イングマルはクロスボウの装填を済ますと船と盾のチェックを済ませ再びエーギルに合図を送り、エーギルは船を海賊船の後方から近づけて行った。






再び海賊船から矢が飛んでくるが構わずに接近し100mくらい接近するとイングマルはクロスボウを撃って行った。



海賊たちは何が何だか分からないまま、さっきのは何かの間違いだと決めつけ同じように船の後方の甲板に陣取りロングボウを放ってくる。




1分もしないうちに15人が撃たれ甲板に悲鳴を上げて転がった。





すぐに船は離れてイングマルはクロスボウを再装填する。





この攻撃を日没まで繰り返した。









さすがに海賊たちは体をさらすような事はしなくなりマストの陰に隠れたり舷側の縁に身を隠したりしていた。



だがそうなるとロングボウを撃つことが出来ない。


射たれた矢の種類でクロスボウというのは分かったがそもそもクロスボウの射手が見えず、どこを狙っていいのかわからないので反撃のしようがなかった。




イングマルが接近すると隠れ、離れてクロスボウの射程外にくるとロングボウの遠距離攻撃をするという形になっていた。




日没とともに戦闘は終わったが視界内で追跡は続いていた。







夜のうちに盾や甲板に刺さった矢を回収し船の損傷具合を確認し、晩飯をつくってエーギルと舵を交代し先に休んでもらった。





騎士たちは初め戦果を確認出来なかったが明らかに海賊からのロングボウの矢の数が減って行って日没前にはほとんど攻撃はなかった。



イングマルのクロスボウの射撃を黙って見ていたが構える前から標的から目線を外さず、狙ったと思ったらもう射っていた。


ホントにあっという間の事であった。



海上では強い風が吹き波のうねりで船は上下左右に揺れている。


ロングボウよりは矢のスピードは早いがそれでも鉄砲とは違い飛んで行く矢は見えている。


ターゲットの海賊はわずかな時間しか姿を見せない。



それらの誤差や偏差、時間差を見越して命中させるのは騎士たちは始めてみる業であった。






目の前の神業とも言えるクロスボウの使い手が小さな子供にしかみえないのでただただ「信じられん!」という他なかった。





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