第273話 帰港
海賊島からの追手はなかった。
ほとんど島が見えなくなってからジョンたちは大声で抱き合って喜んでいるのが見えた。
イングマルは彼らの船に近づいて「エストブルグへ直行するよ!」と大声で伝えた。
彼らは「わかった!」と両手を上げて合図し船内を走り慌ただしく作業していた。
やがて水平線が明るくなって夜が明けてきた。
ノンストップでエストブルグに向かうつもりなのだがジョンたちの船には水も食糧も無かった。
イングマルは時々長い竿のタモ網の中に水と食事の入った袋をいれて彼らの船に渡した。
その他に予備の帆やペンキの入った樽を渡した。
イングマルは「それで舷側を塗って!」と指示した。
イングマルの船と同じ黄土色のペンキで彼らの船の色はタール色でほとんど真っ黒だった。
少しでも特徴を判らなくするためだ。
彼らは忙しく動き回り、ジブという予備の帆を上げ手分けしてロープにつかまりながらペンキを船体外側に塗っていった。
予備の帆をあげるとイングマルの船と同じくらい速度が出てきて2隻の船は前になり後ろになりはしゃいでいた。
結局拍子抜けするくらい簡単に船の奪還は成功し、無事エストブルグに入港することが出来た。
陸に上がると皆も抱き合って喜んでイングマルは彼らに胴上げされた。
ひとしきり喜んでからイングマルは「早速今後の事だけどもう単独航行はやめた方がいいだろうね。どこか大きなギルドか商会に所属して船団を組んだ方がいいんじゃないかな。」と彼らに言った。
彼らは「それは判っている、俺らもそう思っていたんだ。」と言った。
イングマルはさらに「くれぐれもこの後浮かれてあちこちで言い触らしたり酔っぱらって海賊から取り返した!なんて言わないようにね。」と言った。
「彼らがこのまま黙っているわけないから。」と言うとジョンたちは笑顔が消えた。
「本当はほとぼりが覚めるまで見つからないようにどこかに隠れていた方がいいんだけど、もう港に入ってしまったからね。出来るだけ早く強力な船団に入って彼らも手が出せないような状態にしておかないとね。」
「これからが本番なんだよ。」とイングマルは言った。
彼らは息を呑んで「お、おう・・・・。」と力なくうなずいた。
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