第261話  初仕事



数日街をブラブラして 様子を見ていたがいっこうに仕事はなかった。



船の手入れをしていると港の管理事務所の人がよんでいるので行ってみると馬車に乗った 身なりのいい男が「事務所で広告を見たが船長はどこかね。」と尋ねてきた。



イングマルは「はあ、一応僕が船主です。」と答えたが「 なんだと!お前が?!他の船員は?!」と驚いて聞いてきた。




「僕だけです。でも大丈夫です、心配いりません。こう見えても軍艦の船員だったこともあるんですよ。」と答えた。







しかし男は「ふざけるな!何が大丈夫だ!こどものゴッコ遊びじゃないんだぞ!クソッ!こんな町外れまでわざわざやって来たのに時間を無駄にしてしまった!」と怒鳴ってイングマルのいうことに聞く耳を持たずプリプリ悪態をついて馬車に乗って行ってしまった。



港の事務所の男はそんなやり取りを見て「そらそうなるわな。」みたいな顔をして首を振って事務所に戻ってしまった。



「あーあ、行ってしまった・・・・。」とイングまるは残念そうに呟いたが「まあ焦らず待つさ。」と思い再び船の手入れに戻った。









数時間後再び先ほどの男がやってきて「お前、本当に大丈夫なのか?」と焦って聞いてきた。




イングマルは「大丈夫、大丈夫だよー。」と上機嫌で答えた。




「 時間がないのにどいつもこいつも断りやがった。もうお前の船しかない。」と男は言った。




「何を運ぶんですか?」とイングマルは聞いた。




「 荷物じゃない、私を運んで欲しいのだ。バーデンスブルグまで。」と男は言った。




イングマルはバーデンスブルグと聞いてちょっと躊躇した。



「隣国の海軍の司令部があるところですよね。」というと男は「そうだ。すぐに出来るだけ早く行かねばならないが陸路だと2週間はかかるが数日中に行きたいのだ。」と言った。




「では早速行きましょうか?」というと男は「本当に大丈夫だろうな?書類を届けたあとすぐに戻らねばならない、往復たぞ?」と言った。




イングマルは「OKー、OKー。馬車ものせれるので載せていきますか?」と言って桟橋ギリギリのところまで馬車を移動させると手際よく馬車の車輪を外してマストのクレーンで馬車と馬も載せた。




馬は乗せる時に少し暴れたが イングマルの馬がいるのを見るとすぐに大人しくなって仲良く並んで馬房に入った。





男の荷物は鞄1つで準備が整うとすぐに出航した。






男はジェームス・フレイザーと言ったがどこかの位の高い貴族の執事らしい。



ずっと「大丈夫か?大丈夫か?」とブツブツぼやいていた。




何でも一度、乗っていた船が海賊に襲われ人質となってしまい身代金を取られたことがあるそうで、主人が身代金を払ってくれて事なきを得たがもうあんな想いをしたくは無いので普通以上に心配性になっていた。





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