第248話  無人島にて





カヌーが出来てから島をめぐっていたが一番大きくて端にあった島を探索していたとき人間の生活跡があった。



だいぶん時間がたっているらしく家は朽ち果てていて辛うじて石垣が確認出来た。



家の中にはハンマーらしい道具のようなものがあったがすでに土みたいになっていて持ち上げたらボロボロと崩れ落ちた。



ほとんど自然の中に呑まれていたが石の段の上にぼろ布が散らばっていた。



よくよく見てみたら骨のようなものがあり、どうやら家の主のようだった。




どうやらこの人物も遭難した者のようだった。







イングマルは他の手掛かりを探したが何も見当たらずとりあえず骨を集めて岬の先の海が一望できる所に石の塚で墓を建てた。




この人物は嵐で遭難したのか?あるいは置き去りにされたのか?


いずれにしてもずっと救助を待っていたのだろう。





イングマルは墓の前で「自分もこの様になるのか?」と考えていた。





衣食住に困らない状況でずっと魚釣りして過ごせる今のところを「別にしばらくこのままでもいいかな」などと考えていたが墓の人物に叱られているような気がしてきた。





犬のトミーや馬たちの事も気になるし、やはり脱出することにした。


救助を待つのではなく船を作り自分の力で脱出するのである。






だが外洋を越えるには今のカヌーでは無理である。




脱出用の間に合わせではなく今持っているスキルのすべてを注いだ船を作るつもりだった。



すべての島をめぐり使える材料を把握しどんな船にするか考えた。



まだ考えがまとまらなかったがタールがぜんぜん足りないことは分かっていたので炭を焼いて煙を集めてタール作りをしながら船の形を考えた。



さらに煙を利用するため干物を煙で燻してスモークも作った。



炭とタールとスモークが同時に作れてイングマルは上機嫌だった。





だが肝心の船の形のイメージがぜんぜん湧かなかった。




何しろ板材がほとんど手に入らない。



従来の船の形にすると甲板や船体は板材が主になるが手に入らないとなると根本的に船の形を変えていく必要がある。




カール・ド・ルシュキ号のシンボルである折れたメインマストは直径70cmもある太い丸太だが1本の木ではなく何本かの木を継ぎ合わせてタガで固定してある。



それをばらばらにして一番太い材料を船の背骨になるキール材にした。




長さ10mあまりのキール材をじっと眺めているとだんだん船の形がイメージされてきた。



板材を使わずカヌーの時のように細い材料をかご編みのようにして船体を造ることにした。



甲板の部分は直線にすると強度が低くなるので半円径にして全体が丸い形になるようにしようかと思った。



早速強度をテストするために2m四方のフェンスのようなものを作り、乗ったり叩いたり大きな石をぶつけたりして強度を確かめた。



編みかたを色々変えてみてもっとも丈夫な編みかたを探って行った。



平行に編む普通の平織りよりも斜めに編む菱編みが丈夫である。



だがこの編みかたで船体の曲線を作り出すのはとても難しいと思われた。





だが急ぐ事でもないのでこの方法をとることにした。




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