第228話  強制徴募の船員




イングマルは「ここは?いったい何がどうなって・・・」と回りを見てつぶやくとリーダーぽい人が「テメー!いつまでねてやがんだ!さっさと起きやがれ!」とわめいてイングマルを蹴飛ばした。




「何するんです?いったいどういうことですか?!」とイングマルは飛び起きて船の縁まで行って海をながめたが陸地は何処にも見えなかった。




「お前は水夫として徴募されたんだ!キリキリ働け!」と水夫長は叫んでムチを振って他の乗組員も威圧している。



イングマルは「徴募って?・・・何かの間違いです!僕はそんなもんに応じてないし、自分の船があるんです!帰してください!」となお食い下がった。




「お前らの都合なんか知るか!この船にのせられた以上規則に従え!怠けたりサボってたら厳罰だ!覚悟しろ!クソどもが!」とケンモホロロである。




イングマルはなお食い下がろうとしたが隣にいた男が「やめておけ、言うだけ無駄だ。俺達はめられたんだよ。」と言った。




「はめられたって・・・・?」とイングマルは尋ねると男は「強制徴募ってやつだ。最近のあちこちの港でやってるんだ。俺も酒飲まされてこの様だ。どうりで気前の言い奴と思ったんだ・・・全く。」とぼやくように言った。




「強制徴募って、そんなの誘拐拉致監禁じゃないか!」と騒いだが「その通りだよ。」と男は平然と答えた。




イングマルはガックリしてしまった。



初めは貴族らの罠か?と思ったが違っていた。


船員は死亡率が高く特に長距離の航海の場合は病気で亡くなる者がすごく多い。



商船、軍艦も例外ではなく水夫の補充はいつも必須のことであの手この手で人を集めている。




「全くついてないな。」とイングマルは自分の運のなさをなげいたがすぐに気持ちを切り替えて「まあいい、港に着いたら逃げてやろう」と思っていた。



「他の子たちは無事だっただろうか?」幸いこの船にはイングマルだけが連れてこられたようだった。


造船所の子供たちのことが心配になったが、今はどうしようもない。





仕方ないのでイングマルはこの船の船員として働くことにした。


そう決めたら勉強のつもりで何でも身に付けてやろうと思うとやる気が出てきた。




船はイングマルの船より一回り大きく乗組員も60人以上いて、いわゆる武装商船と言うものである。



たくさんの荷を積んで甲板も一杯荷が積んであった。



速度はその分遅くなる。





一層甲板なのでほとんどの乗組員は甲板に雑魚寝であった。






船には砂時計がいくつか積まれていて30分計と30秒計とがあり船の時間は30分計で刻まれている。



30分毎に鐘を撞いて鳴らし時報にしていた。



時計係りは忘れないようにしてひっくり返さなければならない。






30秒計は船のスピードを測るのに使う。



等間隔に結び目の付いた細いロープを海に流し、30秒の間にいくつの結び目が流されるかを測る。



船のスピードがノット(結び目)と言うのはここから来ている。





船員の仕事は以外とイングマルにはそれほど苦にはならず規則正しい行動の毎日は性にあっているようだった。



他の乗組員たちはまずい食事にブーブー文句を言っていたがイングマルには特に問題なかった。




外洋に出ているので夜も当直があった。





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