第217話  造船所の休日





大所帯になったので全員が寝泊まり出来るように新しく寮をつくった。



今まではバラックのような飯場で過ごしていたが大分ましになった。




中央のホールには暖炉も設けた。



夜はここで読み書き算数の教室となった。


教師はもちろんアンリ、クレインである。





イングマルもフリーダたちにしっかり教わったので読み書きはもちろん料理も上手であった。



言語もラテン語の基礎まで理解して、フリーダがそらんじていたいろんな詩も覚えてしまった。


もっとも使う機会はなかったが。


自分が教師役をしても口下手なイングマルにはうまく行かず、あっちこっち話が跳んでしまい自分でも何の話しをしているのかわからなくなってしまった。



やはり適材適所というのがあるようだ。





料理もめんどくささがわざわいして自分でつくる料理も手をぬいてしまい、以前のように馬の餌と同じようなまずい料理を食べていた。



本人はめんどくさいとは言わず「時間短縮で合理的」と屁理屈を言っていたが。








親方をそそのかして寮に隣接する食堂も改造して通りに面してつくり、一般のお客も利用出来るようにした。



これで造船所が休みの時でも自分で作らず、よそに食べに行く必要もない。




安くてけっこううまいと近所の職人や船員達が少しづつやって来た。




休みの日は造船所のみんなは遊びに出かけてガランとしていてイングマル1人で船の改造をしていた。



食堂で休んでいたら以前会った船員がやって来た。



イングマルを見つけると声をかけてきた。


「おっ、ボウズ、お前は遊びに行かないのか?他の子らは町に居たぞ。」



「あっ、僕はべつにやることがあるので。」とモブキャラっぽく言っておいた。




「若いくせに、陰気臭いぞ。今からそんなんじゃ女に持てないぞ。」と船員たちはニタニタと笑いながらイングマルをからかった。




「休みの日まで造船所にこもって何やってんだ?」と船員たちは興味なさげに聞いた。




「いやー、今度古い中古船手に入れたのでちょっと改造してるんです。」というと船員たちはたちまち立ち上がって「なんやて?そりゃお前どういうこっちゃ?!」というとイングマルに掴みかかってきた。



「いや、あの、廃船をもらったので何とか使えるようにしようと思って・・・」とすこし焦って答えた。




船員たちは「どれや?どの船や?!」とかぶりつくように船溜まりを覗きこんだ。



イングマルは干潟を指差した。



船員たちは「どれだ?」といいながら食堂から外に出て食い入るように見た。



干潟にあるのは骨組みだけの沈没した船の残骸だけだった。




船員たちは「沈没しとるやないかい?!しかもフレームだけやし!」と一斉につっこんだ。


「あんなごみみたいなもん、どうしようもないやないかい。」とあきれるようにして食堂に戻っていった。



「あれを改造して使えるようにするんだ。」とイングマルは得意気に話した。



「んなもん、いつ出来るんじゃ?まったく。」と船員たちはどっと疲れたようにテーブルに肘をついてアゴをのせて溜め息をついた。



「すぐだよ、すぐ。」とイングマルはニコニコして答えた。



「おめでたいやつだ。」と船員たちはあきれるように言ったが、イングマルは気にしてなかった。




「お前そんなことより知ってるか?最近また町で無頼漢が出るの。」と話題を換えて聞いてきた。




「何それ?またギャング団?」とイングマルは聞いた。



「イヤ、そんな集団じゃないらしいが、狂暴らしいぞ。」


「まあ、お前んとこは元々無頼の輩だったからな、簡単にはやられんだろうが小さいガキどもは気を付けろよ。」と船員たちは注意した。



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