第211話 再開する造船所
イングマルは速い船がよかったが親方もベルナールも売れる船は従来の形がいいと言う。
船乗りという者は大体が保守的で使いなれた形がいいそうだ。
イングマルは自分の船ではないことを思いだし親方たちの意見に従うことにした。
型の種類も減らして同じパーツを使うようにして作業時間が短縮出来るようにした。
親方も前々から考えていた方法で、自分の思い通りの工法が出来るので張り切っている。
早速2隻分の丸太が注文された。
子供達に仕事を教えるため2クラスに分けてそれぞれアンリとクレインが先生となった
以外にもアンリとクレインは子供達の面倒見がよく子供達にもすぐなつかれていた。
ものを教えるのも上手で夕食のあとは読み書き算数もみんなに教えた。
はじめはイングマルも教えようとしたがもともと口下手でものを教えるのは下手で子供達に敬遠されたのでアンリとクレインに子供らの指導は丸投げした。
だがイングマルの馬車は子供らに人気で暇を見つけては馬車に乗りたがった。
買い付けに行くときは何人か馬車に乗って行き、イングマルは馬車の御し方を教えた。
馬は賢いのでいつも行くところなら道を覚えていて、特になにもしなくても勝手に造船所に帰ってくる。
荷台で遊んでいて気がついたら造船所に着いているのがいつものことであった。
はじめはみんなに刃物の研ぎから教えた。
みんなの道具を揃えるため40丁ものハンマー、ノミ、ノコギリ、チョンナを買いに行き、みんなで交代で使った。
飯場を増築して食堂を作り、当面おばちゃんに給食専従になってもらった。
子供達には製材は無理なのでイングマル達はずっと製材作業をすることになった。
抗争事件の後、町の片付けが済んで造船所から仕事が始まり町の経済活動が再開し始めた。
道具類、ボルトなどの金具類、ロープや帆布などの縫製品。
船を作るとなると多くの仕事が必要になり抗争事件でさびれかけていた港町はにわかに活気づいた。
生き残ったギャング団のリーダーや幹部連中、戦闘員達はアジトを失い財産を失い、奴隷の子供らも行方不明になってしまった。
やがて子供らが造船所にいることがわかると怒り心頭で三者のギャング団の生き残り全員が結託して子供らを取り返そうして押し掛けた。
「やい!お前らガキどもを返せ!」
子供達は彼らを見ると怖がって飯場に隠れてしまった。
「お前達、これ以上騒ぎを起こすともう町には居られなくなるぞ。」
親方が冷静に話して帰るように言っている。
「うるせー!つべこべ言わずガキどもを返せ!」とわめいて剣や棒を振りかざしている。
親方は「やめておけ!お前らはやり過ぎたんだ。もうおしまいなんだ。」と諭すようにいう。
ギャング団は「やかましい!俺らは強いんだ!町の連中がなんと言おうと怖いもんなんかあるか!」
「手始めにお前から血祭りに上げてやる!」そう叫んで親方に切りかかってきたが、背後からイングマルが現れて斬りかかってきた男たちの剣を叩き落とした。
男たちはイングマルを見るとひるんだ。
よく見ると男達はまだケガが治っておらずあちこち包帯やバンソウコウをしている。
イングマルはこん棒を持って男達に向かって「そんな体で僕とやりあうの?」と言った。
みんなひるんでいたが「くそッ!なめやがって!」とリーダーは叫ぶと「おいお前ら!相手はガキ一人だ!今はワナもねぇー!みんなで囲んでしまえ!」と叫んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます