第203話 襲撃
イングマルはいつもの調子でニコニコと話すので、親方ははじめなんのことかわからなかった。
恐らく狼団が数日中にやって来る。
親方もベルナールもやっと事態を飲み込んで慌て出したがイングマルは「大丈夫、今対策しているから。」と言った。
親方は「そんなちゃちなフェンスでどうやって防げるんだ!」と言ったがイングマルは相変わらずヘラヘラと「大丈夫、大丈夫。」と上機嫌でフェンスを設置していった。
最後に足場用の細長い丸太をすべて貸してもらい海のすぐ近くに並べた。
「たぶん襲撃は夜中だろうから寝てていいよ。」と言ったが親方達は「一人でどうするつもりだ?」と聞いた。
「一人だからいいんだよ。」とイングマルは嬉しそうに答えた。
次の日、フェンスが完成しその日はネズミの姿が見当たらなかった。
イングマルは久しぶりに鎖かたびらを着込んで短剣を装着した。
剣は持たずに前に作ったこん棒を準備した。
夜中に松明を掲げて狼団がやって来た。
真っ暗な造船所の中を松明の明かりを頼りに彼らは恐る恐る入ってきた。
全部で25人、狼団のリーダーもいた。
狼団のリーダーはブルボンといい、本当は狼団ではなくブルボンファミリーというらしい。
彼らの目的は造船所にいる連中を叩きのめし、荷運びをやめさせ見せしめに造船所の施設や船を破壊する。
ところが悪巧みをする者達の共通の心理だろうか?彼らはこそこそと動きゴキブリみたいに隅っこを行くだけ。
真っ暗な中をフェンスに沿って移動するだけだった。
「造船所はこんなに広かったか?」
彼らは行けども行けどもフェンスが途切れないので当初の目的を忘れて迷路のようなフェンスをクリアするのが目的みたいになってきた。
フェンスは彼等が入ってきた時から入り口を閉じ、同じところを回るように作り変えられていた。
彼等が松明をたかなければすぐに目がなれ、同じところを回っていることがわかったのであろうが松明の明かりだけにたよっているので目の前しか見えていない。
皆暗闇の中でずっと緊張して移動しているので疲れてしまって「どうなっていやがんだ?!」と大声で叫びだした。
やがて足場用の丸太が隙間なく並んだ巾2m程の狭い通路にでた。
通路は30m程だが全員が通路に入ると出口を丸太でふさいだ。
彼らはゴキブリぽいぽいみたいに罠にはいってしまった。
通路の先からイングマルが棒を持って現れた。
この時点でやっと彼らは罠にはいってしまったことに気がついたが、イングマルひとりしか居ないことがわかると少し安心して「てめー!なめた真似しやがって!」と叫んだ。
「おめーはこの前逃げたやつだな、今度は逃がさんぞ!」と叫んで狼団の中で最も凶暴と言われていた犬ー1が前に出てきた。
彼は「ウォーッ!」と叫んで剣を大きく振り挙げたが、顔面にイングマルのこん棒が命中した。
鼻が完全に潰れてペシャンコになった鼻からドバドバ血がながれ顔面を押さえてうずくまった。
犬ー1は信じられないという表情で手に着いた大量の自分の血を見てたちまち怒りで我を忘れ「ウガーッ!」と叫んで再び飛びかかってきたが顎の先を「コン」と棒で殴ったら膝がカクンと折れてそのまま仰向けに倒れて延びてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます