第191話  降るかかる火の粉





イングマルは大きなテーブルの前に座らされた。




領主は「お前を我が家で使用人として雇いたい。」と言った。




イングマルは驚いて「え!」といい「いや僕は・・・」と断ろうとしたがブローは「よかったなーお前、こんなことは滅多にないぞー、本当は俺がなりたかったくらいだ、お前の方がいいだろうと勧めたんだ感謝しろよ。」と言った。




イングマルは「いや僕はこの仕事が終わったら海に行くので・・・」となお断ろうとしたが、ブローは「何を言っている?こんないい話を?領主様を困らせるな!」と言う。



領主は「よいよい、いきなりで驚くのは無理もない。当面形だけでいいのだ形だけで。」といい、執事に書類を持って来させ「ここにサインするだけで良い。」と言った。




書類には「ベーゼル伯爵家使用人」とだけ書いてあった。




イングマルは字の読めないふりをして適当に汚い字でサインした。




領主は書類を受け取ると「これで一安心。良かった良かった。」と言うと満面の笑顔でそのまま部屋を出て行った。




キョトンとしているとすぐブローにつまみ出されるようにして屋敷を出て、今度は「もう一軒、お前に行ってもらうところがある。」と言って執事に渡された手紙を持って連れて行かれた。




今度は貴族の娘の屋敷に連れて行かれた。




屋敷の門の前にはすでに家の者が待機していて中庭に案内された。





やがて当主、執事、娘、使用人、傭兵らしい者たちがゾロゾロと現れた。




ブローは当主に挨拶して手紙を執事に渡すと「それでは私はこれで。何分よしなに。」と言って去っていこうとする。



当主は黙って頷いた。



イングマルは「あのちょっと・・・」と言うが、ブローは「俺の仕事はここまでだ、後はお前の仕事だ。」と言うとそのまま去って行く。




そのままブローは門から出て行ってしまった。




イングマルは周りを見渡し困った顔をして「あのー、僕に何か?」とみんなに聞いた。




全員でイングマルを眺め、一同の中には相手が子供なのに少し戸惑うものもいた。




当主は執事から渡された書類を見て、合図を送ると男達は一斉に剣を抜いた。




それを見てイングマルはびっくりして「ちょっと何ですか!?」と言うと当主は「お前には気の毒だが死んでもらう。」と言った。



イングマルは「何なんですか!僕が何したって言うんですか!?」と叫んだ。




貴族の娘は「自分は関係ない」みたいな顔で横を見ながら髪の毛をクルクルして触っていた。




イングマルは焦ったふりをしながら冷静に相手の人数を確認した。



全部で15人、円状に囲まれていた。




3人の傭兵が面倒くさそうに「さっさと済まそう」と言いながら近づいてきてイングマルに斬りかかってきた。




イングマルは3人の間をクルクル回転しながら通り抜けたかと思うと3人の男はそのままバタバタと倒れていった。




みんな何が起こったかわからなかった。




イングマルは相手に考える隙を与えず縦横無尽に走り回り、相手が落とした剣を拾い次々と周りにいた男たちを切り刻んで行った。




一番奥に居て呆然と立ち尽くしていた当主の横を駆け抜けると、当主の首がぼとりと落ちた。



イングマルは執事と娘を残して全員を殺害してしまった。





腰を抜かしてその場にへたり込んで震えている執事を捕まえて事情を聞き出した。








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