第182話  結婚式





慰霊式がすんですぐに冬が来て、本格的に雪が降り始めた。






あちらこちら水気のある所はすぐに凍り出し、湿地も凍って歩けるようになった。



ほとんど行き交う行商人も居なくなり、店も休みとなった。



戦いで個人の家を作るゆとりがなかったので、みんなで竪穴式住居で過ごした。





大勢がひとつ屋根の下にいると体温だけで暖かく、特に火を焚かなくとも十分暖かく過ごせた。





吹雪の日は何日も外に出れないので皆、地下の家で思い思いのことをして過ごしていた。





コニーはこのところ、キャロルが何かというと鍛冶屋のフランクの話ばかりするので妬いてなんとかキャロルに振り向いてもらおうと必死であった。





イングマルは今で言うミリオタ気質なので武器やら要塞の話ばかりで皆から少し距離をとられている。



今も昔もオタクは引かれるようだった。




なんとかキャロルに振り向いてもらおうとするにはどうすればいいか一番年の近いイングマルに相談するコニーだが、イングマルは相変わらずそういうことには全く興味がないので話しにならない。


コニーからもほとんどイングマルは相手にされなくなっていた。




唯一イングマルを御していたローズはフランシスに夢中だし、と言っても剣術の訓練ばかりだが。






イングマルは兵達から回収した数千の武器や防具を手入れして、破損したところは直していつでも使えるようにしていた。



将来、村が大きくなり人も大勢増えた時、いざという時のために武器庫に保管しておくことにした。




ヨアキムも一緒に甲冑直しをして、二人並んで黙々と作業していた。




分からないところはヨアキムに教えてもらい、イングマルも板金や彫金のスキルを身につけていった。



特に板金技術は特殊な技術だった。


単純に折り曲げるだけでなく球状の三次曲線を作り出すのはとても難しく面白かった。



1日、15から20着も直したらもう日が暮れた。




イングマルは長い冬の間、来る日も来る日も武器や防具の手入れと素振りの稽古をして過ごしていた。





たまに晴れた日はみんなで日向ぼっこをして過ごしたりした。







晴れが続いた日に、作りかけの丸太小屋を急遽サウナにした。




閉めきった小屋の中で石を組んでそこで直接火を焚いて、数時間後火が燃え尽きてから煙りを出すと熱いサウナになって皆で交代で入った。



イングマルはサウナが気に入って熱くなったら外に飛び出して雪の中で転げ回わり、再びサウナに入るというのを一日中繰り返していた。



武器防具の手入れと素振りの稽古以外はおやじみたいにサウナばかり入っていた。





防具の多くが直せた頃雪が溶け始め、雪割草が顔をのぞかせるようになった。



暖かい日が続くようになって湿地の氷も溶け始めた。










春が来てからフランシスはローズに正式にプロポーズした。



みんなで食事をしている時、突然フランシスはローズの前でひざまづいて「妻になってくれ」と頼んだ。



ローズはどうしていいかわからずオロオロしていたが、みんな「はいといえ!」とはやし立てた。




ローズはイングマルを見たが、イングマルもコクリコクリと頷くだけだった。




ローズはそれを見て意を決して、フランシスの手を取って「はい。」とつぶやいた。





一同「ワーっ!」と喜んで、拍手が鳴り止まなかった。




すぐ結婚式の段取りが行われ、ジャンポールの元へも結婚式の招待状が送られた。




自分たちの家に帰っていたメンバーもやってきた。







一ヶ月後、新領主の結婚式とお披露目、開村式を一緒に行うことになった。


ついでにレオンとベラの結婚式も行うことになった。



ジャン・ポールと国王の代理人としてガス・ウィンザースプーンが一緒にやって来た。



再び村は大勢の人でにぎわっていた。



教会はないが臨時の祭壇が作られて、ジャンポールが神父役として式を取り仕切った。


イングマルは覚えた彫金の技術を早速活かして、金貨を鋳潰し金の指環を4つ作って新郎新婦に送った。







花嫁の父親役として、イングマルが横に立って付き添った。





神々しく美しい花嫁と立派な騎士の姿に居合わせた人々全員、ため息と拍手が鳴り止まなかった。




レオンとベラは何だか場違いな感じがして一緒にいてはいけないような気になっていたが、ローズがべラとレオンの腕を組んだ。




ジャンポールが何か言っているのだが、拍手で聞き取れなかった。




互いに指輪を交換し、2組の花嫁がキスをして、式は最高潮となった。














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