第180話 戦いの終わり
皆日々の訓練の時よりも、簡単に兵たちを仕留めて行った。
イングマルは一日中森の中を駆け回り、兵を追い立てて行く。
出てきたところを別働隊が討ち取る、というのが繰り返された。
森の中から街道、その周辺に広がる平原には討ち取られた兵の死体が無数に散らばっていた。
周りの惨状とは裏腹に、秋晴れの快晴ですがすがしい天気であった。
森から出てきたイングマルは戦闘後別動隊のみんなと合流し、久しぶりの再会を抱き合って喜んだ。
みんなで村へ移動し、イングマルはもう一度森の中を見て回り数日かけて生き残りがいないか調べて回った。
イングマルが戻ってきてから、戦闘終了を確認した。
結局、2ヶ月ほどで戦いは終わった。
後片付けが始まったが数多くの死体が腐り始め、兵たちが残した糞尿の匂いと混ざって、凄まじい匂いがあたりに立ち込めた。
みんな具合が悪くなるほどであった。
森の中に数十の穴を掘って死体を埋め、彼らが身に付けていた武器や防具、金品を回収した。
湿地では足を取られた者たちが座ったり、立ったりしたまま衰弱したり、矢を受けたりして死んでいてこれらの回収にも骨が折れた。
結局、全ての死体を埋葬するのに一か月以上もかかった。
死体の数を数えたところ、3850もの死体を埋葬した。
イングマルには名簿で村人の特徴や名前を知っていたので、死体の中には誰なのか分かるものもあった。
この戦いに参加した正確な数は分からないが、名簿では約4000であった。
死者の持っていた金品や装備は全て回収したが、大変な金額となった。
彼らは一人当たり50枚から100枚以上の金貨を持っていた。
ニコラスからもらってからほとんど使う間もなかった。
金貨だけでも総数50万枚にもなった。
戦いに参加した全員で均等に割った。
この時点で全員、大金持ちになった。
何もしていないが戦闘中ずっと足留めを食らっていた行商人にも迷惑料として、数年は遊んで暮らせるほどの金貨が配られた。
彼らはずっと文句を言っていたが、金貨をもらった途端に自分の手柄のようにあちこちで吹聴して回った。
フランシスはジャン・ポールと国王に、戦いが終わった事を知らせに王都に向かった。
ほどなくしてフランシスとジャン・ポールも帰ってきて、みんなで再会を喜んだ。
イングマルはジャンの作ってくれた名簿と物資の統制が大いに役立ったと感謝し、彼にも金貨が分けられた。
みんなで村の整備を再開し、牧場の整備も進んだ。
イーリス、マーヤの村から援軍に参加してくれた40人の村人は謝礼にもらった金貨があまりに大変な金額だったのでいったん村に帰り、村長から「このままでは金額と釣り合わない」と大勢が復興に手伝いに来てくれて、作業がはかどった。
村の整備が一段落してゆっくりできる時間ができた頃、メンバーの中にうなされるものが数人出てきた。
死者の姿が思い出されると言う。
みんなで相談して死者を埋めたところに石で塚を作り、十字架を立てた。
最も犠牲者の多かった森の出口や第一砦の外、第3砦の中にも塚と十字架を立てた。
みんなで慰霊式を行うことにして、村で食事や酒が振る舞われた。
近隣からも大勢やってきて式の終わりに挨拶が求められて、新しい領主のフランシスに挨拶するように言ったが、フランシスは口下手でとても挨拶などできないと断った。
ローズがと思われたが慰霊式にふさわしくない勇ましいことを言いそうなので断念され、イングマルはまたおちゃらけたことを言いそうなので求められることすらなかった。
結局、一番教養のあったフリーダが挨拶することになり壇上に立った。
みんな注目する中挨拶が始まった。
「どんなに嫌われ憎まれ望まれない人生だった人々も私たちも、等しく皆神の子です。
そうする他にはなかったとはいえ、彼らを苦しめ殺めたことを神様にお詫びし、許しを乞いましょう。
彼らの魂が主の御手にゆだねられ、安らかでありますように。アーメン。」
そう言ってから、五つの村の旗を塚にかけて花を添えた。
慰霊式が終わってから、雪が降り出した。
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