第161話 ライラの帰還
連日の祝賀会で皆ご馳走ざんまいの日々を送っていたが、やっぱり皆が作る料理の方が断然おいしいとつくづく感じた。
フランシスもレオンもべラも本当にそう思った。
騎射専門の者達の乗る馬は、イングマルの目利きで特別に選りすぐった馬で
みんな良い馬である。
イングマルはライラの装備を最後に見せてもらった。
ちゃんと手入れがなされ、剣もクロスボウも手擦れた部分は彼女の手の形に凹んでおり体の1部のようになっている。
イングマルは「うん。よし。」と言って装備を返し、最後のプレゼントと言って市で買っておいたシロン産の仕上げ砥石をプレゼントした。
大変高価な仕上げ砥石である。
「帰ったらもう戦わなくていいように、手入れを怠りないようにね。」と言った。
ライラは少し意味がわからなかった。
「戦わなくて良いなら手入れしなくても良いのでは?」と思ったが、微笑んでうなずいた。
翌日ライラの村に到着し家に帰った。
両親は初めライラを見ても誰かわからなかった。
それほど彼女は変わっていた。
落ち着いた雰囲気、動作、どう見てもさらわれる前の面影は1つもない。
ライラだとわかると飛び上がって喜び驚いていた。
やがて3人とも泣いて抱きしめ合い、無事帰ったことを喜んだ。
その日は帰還祝いと歓迎会が開かれて遅くまで飲んで騒いでいた。
翌朝、村人に見送られ一行は次の目的地に向かって去っていった。
皆、何事もなく無事帰ったことを喜びつつも「何かもの足りない。」と考えていた。
だが、これが通常のことなのだ。
どこかで戦いを望んでいるようなことがあってはならないのだ。
イングマルもみんなも、心に沸き起こる冒険心のようなものを必死に抑えて、次の目的地に向かうのであった。
ライラを始めローザ、スーザン、アデラと騎射専門の者たちが無事帰ることができた。
その後も、シャル、エイミ、サラ、イングリット、ソフィ、シンシア、マーリー、ノエル、イレ−ヌ、クリスタと道順に帰ることができた。
途中何も起こらず、このまま旅は無事に終わるのではないかと思われた。
帰還予定の者もあと十数人になりだいぶ寂しくなった。
でも寂しさを考えないようにして、毎日忙しく日課をこなし新しい商品づくりにいそしんでいた。
ベロニカの村に向かっていたとき、難民らしい人々とすれ違った。
皆絶望に打ちひしがれた表情だった。
話を聞いても答えようとしない。
やっと話を聞くと村を追われたという。
詳しくは聞けなかったが、どうやら女を売ることで成り立っていた5つの村の住人だった。
女を売ることで成り立っていられいたことがばれて、王都から兵がやってきて駐留し管理下に置かれ、村人が行っていた事が世間にばれると周辺の村や貧困にあえでいた人々が集まってきて村人を暴行し、追い出されたという。
自業自得と言ってしまえばそれまでだが、あまりに哀れである。
衛兵も暴行を特に止めようともせず、村の中でも罪を逃れようと罪の擦り付け合いが行われ村人同士で暴行が繰り返された。
当然その矛先は弱者に向かい、あまり関わりのないものまで罪を問われ追放されてしまった。
この難民たちもイングマルたちによってもたらされた結果と言えるであろう。
いつか教会の神父が言っていたように、ひどい目に会う人の数字だけを見れば以前の方がはるかに少ないのだ。
今、目の前にいる大勢の難民は理不尽を正された結果生み出された。
難民の列を見ながら皆それぞれ考え思うところがあるようだ。
イングマルは難民を眺めていたが、難民の列から脱落しもう動けなくなっていた人々の中に見覚えのある少年を見つけた。
イングマルが急いで駆けつけ傷だらけの少年を介抱するとキャロルの村にいた少年で、キャロルが人買いに襲撃されていたのを命がけで知らせてくれた少年だった。
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