第143話 再会
イングマルは「ローズの言う通り。」と思っていたが、すっかりしょげてしまったフランシスと皆の雰囲気にオロオロしていたが、気分を変えさせるためこれまでの出来事の詳細をフランシスに聞いていた。
まだ戦闘が終わった訳ではない。
ハーバーの街で急いで物資を調達し、装備を整えた。
街を見て回り、古い城壁だったが盗賊団のあの兵数ではこの街を落とすのは無理と分かっていたので、イングマルは安心して出発の準備をした。
ほどなくして、盗賊団は街を迂回してどこかに去っていった。
街の住人も皆もひと安心した。
重傷者は町の病院に任せ、イングマルはフランシスと別れの挨拶をしに行った。
「ちょっと待ってくれ、私も一緒に行かせてくれ。」とフランシスは言う。
イングマルは、すぐきっぱり断った。
ローズがそれを聞いて少し残念そうにしていた。
「以前、同じことを言ってきたものがいて、ひどい目に遭いまして。
もう二度と、仲間は作らないことにしています。」とイングマルは言うと、フランシスは「違うんだ、興味本位からじゃないんだ、私は王からそなたらの保護と人買いの退治を命じられているんだ。」
と言うと、ポケットから書類を取り出して見せた。
イングマルは書類を見たが、確かにそのようなことが書いてある。
いくつか読めない単語があったので、フリーダを呼んで読んでもらった。
確かに書いてある、とは言えイングマル達がそれに従う義務は無い。
それに今のフランシスは重傷者で一緒に連れて行っても足手まといでしかないのだが、ローズがあんまり悲しそうな表情をしているので「あーもう、わかったよ。一緒に行こう。」と言った途端、ローズはパーと明るい表情になった。
イングマルは「わかりやすいなー」と思ったが「そのかわり一緒に行くなら、みんなと何もかも一緒に行動してもらうからね。」と言った。
フランシスは「わかった。」と相変わらず無表情で頷いた。
とは言え、フランシスは重症でしばらくは何もできないので、1週間ハーバーの街に滞在した。
その間イングマルはフランシスの武器や防具、馬などを調達した。
クロスボウは手作りした。
フランシスは従来の長剣の戦いばかりのようで、古いスタイルに凝り固まっていた。
イングマルは彼の戦い方を見て1から鍛え直してもらおうと思っている。
フランシスのほうも彼らに2度も助けられた事で彼らの闘いの強さを実感しているので、できることなら素直に学ぼうと思っていた。
あんまり長居もしていられない。
フランシスが動けるようになると、包帯だらけのフランシスを馬車に乗せ出発した。
しばらくは荷台に作ったハンモックで寝て過ごしてもらった。
横になりながらフランシスはみんなの行動のひとつひとつを驚いて見ていた。
戦闘訓練は彼が今まで見たどんな騎士よりもハードな訓練内容で、見たことも無いクロスボウの騎射をしている。
皆交代で作業して得て不得手はあるにせよ、みんな同じことができる。
女性があんなに上手に乗馬をするのを見たのも初めてだった。
何よりも驚いたのはみんなが実に楽しそうに生き生きしていることだった。
戦闘訓練など辛く厳しいものである。
自分も経験があるが、他の者も皆いやいやしているのが普通だった。
しかし彼女たちは生き生き楽しそうで、旅の糧を得る為の商品づくりも自分たちで楽しそうに行っている。
フランシスは自分のふがいなさを思い知るようで、少し恥ずかしかった。
彼女たちにかなうものが1つもないように思えたのだ。
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