第141話  討伐軍4





大勢の人が集まっている町の広場で戦いを見てきたものがいて話していた。


戦いはすぐ隣の街外れで行われ、すでに始まっているという。






イングマルたちのいるところから20kmほどのところなので、急げばその日のうちに到着できる。





イングマルは戦わないまでも、盗賊団の規模や戦い方を見ておきたかった。




みんなにそのことを伝えて「見物だけしたい」と言うと「イングマルに従う」と言ってくれたので、物資の補充と装備を整えてすぐ出発した。




イングマルたちだけでなく、戦いを見物しに行く者が他にも大勢いた。





早足で移動し街道は見物に行く多くの人で賑わっており、現在の戦況を知らせて回る者や土産売りやらでお祭り騒ぎだった。










数時間後、イングマルたちはハーバー郊外の戦場を一望できる高台に到着し、見物することにした。



ちょうど盗賊団が進撃してきたところで、一目で両軍がわかった。



討伐軍はカラフルな旗を掲げ、一人一人のいでたちもそれぞれが目立つようにカラフルだった。



盗賊団は全体に黒っぽい。




討伐軍は数は多いのに黒に押されており、まとまって抵抗しているグループは1つか2つしかない。



広がった外の方では、早々と逃げる人々が見えた。



再結集した軍勢は遠くから見ても勝敗は明らかで、ほぼ一方的に討伐軍はやられたようだ。












戦場では討伐軍は混乱していた。



再結集してみて兵が半分になったのを知ると、パール司令官は早々と逃げ出し王都に帰ってしまった。




取り残されたジャンとフランシスは、このことが知られれば全軍崩壊してしまうのでなんとか悟られずに撤退することにし、フランシスがシンガリとなって残り、ジャンは本隊を連れて撤退することにした。



しかし全軍退却の太鼓が鳴り響くとみんな秩序も何もなく我先に逃げ出した。



ジャンはなんとか秩序を保とうとするも押しとどめることもできず、どうしようもなかった。


もはや撤退ではなく潰走である。




その様子を見て盗賊団は好機と判断し、それぞれ追撃して獲物を追い回すように散っていった。



最後にフランシス率いる部隊50名ほどが残ったが、すぐに包囲されてしまった。




盾に身を縮めてこもっていたが、矢や槍に1人また1人と倒されてゆく。












イングマルは「あーあダメだな、これは。」と感想を漏らした。


みんなもほぼ同じ気持ちだった。





だんだん小さくなってゆくシンガリの円陣の中に、見覚えのある甲冑の人影をイングマルは見つけた。



「んー?!あれ、フランシスじゃないのか?!」とつぶやいた。





横でローズが「なんだって?!」と身を乗り出してみる。



よく凝らしてみるが、遠すぎてよくわからない。




1番目の良いエマが目を凝らすと、確かにフランシスとよく似ている。



「本当だわ。あの騎士さんみたい。」といった。





「あーあ、あの騎士さん、また要領の悪い戦いをして命を粗末にして。」とイングマルはつぶやいたが、ローズはいてもたってもいられなくなって完全武装になった。




それを見てイングマルは「どうするの?見てるだけじゃないのか?」と聞いた。




ローズは「せっかく助けた命を無駄にしやがって!!説教してくる!」と言って、馬に乗って走り出した。









イングマルは新しくメンバーを増やした15人の騎射専門と、空身の馬車2台を連れて「やれやれ」と言いながらも嬉しそうに馬で駆け出した。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る