第139話  討伐軍2






数の多い現場では怖いものはなく、もはやニコラスの言うことさえ聞かなくなり王族の外戚が居る街が襲われ略奪を受けてからは「討伐もやむなし」と言うことになり、パール・ヘレニウス伯爵が総司令官として討伐軍が編成された。





参謀役で現場指揮官はジャン・ポール、フランシス・ノイマン両名が選ばれ討伐軍に合流するよう命令が出た。




マイニッツの街で報告を受けた2人はすぐ討伐軍の元に向かった。




前線基地となったハーバーの街で、2人は総司令官のパール・ヘレニウス伯爵と面会した。




しかしパール伯爵は実戦経験は全くなく、やる気のないダメ貴族の見本のような男だった。




兵力も500程度で、騎士は40騎しかいない。




フランシスとジャンは、不安しかなかった。





2人はこのたびの討伐相手がニコラス配下の者とは知らないが、人買いと直接対峙したフランシスは彼らの実力を身をもって知っている。




武装集団の数は300前後と言われている。




パール伯爵も兵士たちも「盗賊団など軍旗を上げて倍以上の数で進軍するだけで、恐れをなして逃げ散るに決まっている」と思っていた。




盗賊団はムーランの村を襲ったあとハーバーの街へ向かっている、と情報が入り討伐軍の斥候も武装集団がこちらに向かっていることを確認した。




パール伯爵は「飛んで火にいるなんとやらだ!」

直ちに全軍出撃するよう命じた。




討伐軍は軍旗をあげ、太鼓を鳴らして進軍した。


なるほど確かに勇ましい騎士や兵の進軍する様は頼もしく「これでもう安心だ。」と思わせた。





盗賊団は半分酔っ払って、馬に女を乗せてているものもいる。





規律などというものは全く持っていない。




彼らは欲望の塊であった。





彼らは斥候も出さず、その場その場で気分次第で行動している。




だが反目しあいつつも分散することはなく一緒に行動しているのは、彼らも分散するとやられることを直感的に感じている。




そのため喧嘩しあいながらも戦闘や略奪の時は、時に競い合い協力し合っている。




彼らの本来の目的は、イングマルたちを葬りさることである。



だがそれはニコラスの個人的な意地の分が強い。


多くの者にはそれほどイングマル達にこだわりがあるわけではない。


いつ会えるかわからない相手より、むしろ目の前の略奪の方が旨味がある。




しかしニコラスの依頼である以上、彼らはイングマルを葬りさるまで徘徊し続ける。






誰も彼らを止めることができなかったが、ここに初めて彼らを止める勢力が現れた。





双方進軍を続け、ハーバー郊外の小川を挟んで対峙することになった。






討伐軍の1人の騎士が盗賊団へ向かって降伏の勧告を行いに行ったが、口上が終わる間もなく矢を射掛けられた。




両軍は矢の打ち合いから戦闘が始まった。






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