第137話  ローラの帰還2







 泣いて両親にすがるローラにローズは「自分たちの村ができたら、また迎えに来たらいいんじゃないか。」と言って、ローラをなだめた。




ローラも納得して村を出ることにした。


両親に別れを告げて急いで村を出た。




しかし一行が村に入ってきた時から、村人みんなに知れ渡ってしまっている。








案の定、村を出てからすぐに数人の若い男たちに止められた。


村の若者だが、ローラには誰かわかっていた。





男は「おい!ローラ!何処へ行くんだ!俺達にはなんの挨拶も無しか?!」とわめいた。



ローズが前に出て「何だいお前らは!?」と言い返す。




男は「お前こそ何なんだ?!ローラは俺の女だぞ!」という。




ローズはローラを見たが、ローラは首を振っていた。




「勘違いするんじゃないよ!お前みたいな奴らがローラの男のはずないだろうが!失せな!!」ローズは吐き捨てるように叫んだ。





「うるせえ!!お前には関係ねーだろが!おいローラ!用があるのはお前だ!!すぐ馬車から降りてこっちに来い!!」男達は慣れた調子で怒鳴った。




ローラは首を振るばかりだった。





「お前!!俺達に逆らってただで済むと思ってんのか!?」と、男達は大きな声ですごんでいるが、イングマルはニヤニヤ笑いながらこの結末がどうなるのか楽しみに見ていた。




ローズが馬車から降りてきて、剣を抜こうとした。



男たちは少しひるんだが「なんだ?やる気か?容赦しねーぞ!!」と喚く。





ローラはローズを引き留めて男たちの前に立った。



そして「ごめんなさい。私はもう昔の私じゃないの。あなたたちとはもう関わらないわ。」と言うとペコリと頭を下げた。



男はそれを聞くと「てめぇ!ふざけんな!」と叫んでローラをぶん殴った。





「おめーは俺達の言うことを聞いてりゃいいんだ!!」そういって、もう一度ローラをなぐろうとしたがローズの剣が男の喉元に掲げられた。




ローズは「ローラは私たちの仲間よ。欲しければ私を倒してからにしな!!」と叫んだ。




しかしローラはローズを止め、首を振ると「それは私がすることよ。」と言って短剣を取り出した。




「私は古い忌まわしいしがらみを断つわ。自分の力でね。」そう言うと短剣を構えて男達と対峙した。





男たちは小さなナイフしか持っておらず、しかし引くに引けずローラの隙のない構えを見てひるんだ。




イングマルは馬車の荷台から長剣を取り出し、男たちの前に放り出した。




何も言わないが「それで戦え」ということだ。


自分の我を通したいなら、命をかけろ。






イングマルは、ローラにも辛辣で容赦がない。


初めから手助けする気はなく、荷台に座ってだまって見ている。






ローラには十分戦える技を教えて身についている。


後は真の覚悟を出せるかどうかだけである。




真に自由を求めるなら、命がけで戦え。






ローズはそれどころでは無い。


いつでも飛び出せるよう、足踏みをしている。





男たちは長剣を拾い上げると鞘から抜いて両手で構えたが、砥ぎ上げられた刃はカミソリのようで触れるだけで切れそうなほど鋭い。




人を切り裂くために作られた長剣を初めて持った男たちは少し怖くなってしまい、だんだん脂汗を流し死の恐怖が目の前にあるように思えてきて怯えだした。



動物の本能が、危険を感じているようだ。




不退転の決意のローラを前に、男たちはなすすべがなかった。




乱暴に大きな声を出せば何でも思い通りに生きてこれた男たちは、いつものようにすればローラは言うことを聞き、彼女を売りに出せば大金が手に入ると思っていた。



が、目の前にいる女はもう昔のローラではなく、確実に自分を殺す気でいる獣のように感じて完全に戦意を失った。




男たちは剣を放り出して「覚えていろ!」と叫んで走って逃げてしまった。




ローラは戦わずに勝ってしまった。





ローラは「ふー」とため息をついてその場に座り込んだ。



皆が駆け寄ってローラをねぎらい、イングマルは黙って剣を片付けて再びみんなを乗せて出発した。


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