第68話 逃げ人3
辺りはすっかり暗くなっていた。
イングマルは血の後をたどっていると、馬車の轍が見えてきた。
やがて奪われた商会の馬車が見えてきた。
その横の廃屋に血が続き入っている。
イングマルは扉の横にひそんで、聞き耳をたてた。
ボロ布を持って扉を勢いよく開けボロ布を放り込むと、矢が飛んできて布が射抜かれた。
次の瞬間にイングマルは突入し、矢の飛んできた方向に飛び込んでクロスボーを持っていた男を下段から斬り上げた。
男の腕が落ち腹から胸が切り裂けて、男は仰向けに転がった。
イングマルは部屋の中を見渡すと驚いて見ていた女が「あなたー!」と叫んで男の側に駆け寄った。
男にすがり泣く女をイングマルは唖然と見ていた。
部屋の隅には赤ん坊がいた。
安らかな顔で寝ている。
女は男と何か話をしていたが、男はすぐ死んだ。
女はすがって泣いていたがやがて泣き止んで、傍に落ちていた剣をつかんでイングマルめがけて斬りかかってきた。
イングマルは剣を叩き落とし、女を取り押さえた。
すぐに女を縛り上げた。
イングマルは商会の馬車と奪われた荷と金を回収し、家のなかの盗品だと思われたものをすべて回収し女と赤ん坊を馬車に乗せ、男たちの馬も回収し男たちの墓を建てた。
先ほど倒した2人の男の墓も建て、ゆっくりと街へ帰って行く。
辺りは少し明るくなってきていた。
女もイングマルも黙っていた。
赤ん坊がぐずりだしたのでイングマルは縛っていた女のヒモを解き、赤ん坊を抱かせた。
やがて向こうから討伐隊がやってきて、イングマルと合流した。
みんなに取り囲まれて、イングマルは事情を説明する。
みんなは女と赤ん坊のことを聞いてきた。
イングマルはみんなに「盗賊に囚われていた人だ。」といった。
女は目を丸くしてイングマルを見つめた。
イングマルはみんなに女性の保護を頼み、積み荷を渡して自分の馬車に乗って去っていった。
夜が明け、朝日がまぶしい中をイングマルは去っていく。
女は何か言おうとしていたがイングマルはもう離れてしまって、何を言ったのかはわからなかった。
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