第63話 横恋慕
盗賊団制圧後、しばらくして治安も回復して再び商売の日常が戻ってきた。
イングマル達、商人、といっても様々である。
彼は物である商品を売り買いして運ぶ。
いわゆる実体経済の担い手である。
この頃、高利でお金を貸したり投資というイングマルにはよくわからないものを扱う商人が現れ、しかも短期間で巨万の富を得るものまで現れてきている。
特に高利貸しの中には相手の弱みにつけこんで暴利を得るものがいて、それらと同列に商人が見られてしまうのがイングマルは嫌だった。
商人というだけで、いやしい者と思われてしまうのである。
酒場にちょくちょく出入りしていたレオポルド・カスティスはそんな一人だった。
中年の彼はニーナを気に入り、何かとちょっかいを出すようになっていた。
初めは贈り物を送り続け、効き目がないとわかると嫌がらせをするようになりやがて乱暴な振る舞いをするようになっていた。
いつもどこでもそういうことをしてきているので、町中のどの店でも嫌われていた。
しかし、町の有力者と知り合いなので誰も何も言えない。
それでもニーナが誰にもなびかないうちは、それほど大したことはなかった。
しかしニーナがイングマルと仲良くなった、とわかると露骨に嫌がらせをするようになってきた。
ニーナとイングマルの事は多くの者は微笑ましく見守り、1部のものが悲しんで歯ぎしりし、極々 1部のものは怒りをもって見ていた。
レオポルドもその1人である。
店の主人はこの男が店に来ると、ニーナをさがらせた。
他の客もニーナをかばうように振る舞い、とうとうこの男は「ニーナを出せ!」と騒いで暴れだしたのでこの店から出入り禁止となった。
その後、この男は夜中に店の前に汚物をまいたり、店に火をつけたりした。
すぐに消止められて何事もなかったが証拠がないため、つかまえることができなかった。
やがて街にニーナを淫乱、売春婦などという落書きや張り紙が出回った。
”ニーナは公爵のところで、母子ともに公爵をたぶらかし、散々色目を使って金品を貢がせ、それが滞ると人質になっていた、などと言って逃げ出した、とんでもない一家だ”。 などという張り紙まである。
さすがに誰も信じていないし、こんなことをする相手もわかっていたのだが結局何もできなかった。
イングマルも事態を知ってとにかくニーナが1人にならないようにし、商売仲間にもお願いしてイングマルが忙しい時はニーナを交代でガードするようになった。
ライバルの彼女をガードするのに皆、まんざらでもないようだった。
名実ともにナイトになったような気分だった。
レオポルドは手を出せないとわかると「こんなことになったのは、アウグストとか言う小僧のせいだ。」として、今度はイングマルを狙うようになった。
狡猾なレオポルドはイングマルのことを徹底的に調べて回り、弱みを探すようになった。
やがてアウグストが町にやってきた時期と、マクシミリアン学園前の殺人事件と時期が近いことに気がついた。
そういえば犯人はまだ捕まっていない。
当時はこの話で持ちきりだった。
「まさか、こいつが・・・?」と疑惑をいだくようになった。
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