第38話  悪魔が出る峠2







黒いものは立ち上がると剣を構えて近づいてくる。




歩いてきてやっとそれが昨日の少年だとわかった。



男たちが「てめー!」と叫ぶが、皆恐怖で顔が引きつっている。



1番前にいた槍持ちが槍を突きだそうとした。





イングマルは男の懐深くに入り込むと槍を持ったままの両腕を切り落とした。




血しぶきを撒き散らしながら、コマのようにのたうちまわる。






他の男たちはできるだけ後ろに下がろうと互いにおしくらまんじゅうのようになり足元がおぼつかない。




剣を突き出しているへっぴり腰の男は剣を前に突き出したまま、何もしないうちに腹を切られ内臓が飛び出した。




必死になって飛び出したものをかき集めながら、うつ伏せのまま死んでしまった。




それを見た他の男は悲鳴を上げて走って逃げ出したがあまりの恐怖に早く走れない。




歩いているのと変わらないほどのスピードだった。




そのままイングマルに両足を切断されはって逃げるが胸を貫かれ、剣が地面にめりこんだ。








最後に残ったのはリーダー格の馬上の男。



山賊のリーダーなどしているが元は傭兵である。




騎士のように剣をつがえ「いやぁー!」と叫びながらイングマルに向けて突撃してきた。





イングマルはさっき切り落とした男の足を拾い上げると走ってくる馬の顔面に向けて足を投げつけた。




馬は見慣れないものに驚いて前足を挙げて立ち上がるとイングマルが馬の左に出て男の左足を切り落とした。





そのまま落馬した男は片手を上げて「待て」の構えをしたが声が出るよりも早くイングマルはその腕と首を同時に切り落とした。







そのまま再び岩の上にちょこんと座って周りをながめる。








辺りは文字どうりの血の海だった。



死体の山に隠れて死んだふりをしている男を見つけるとすぐに駆け寄って短剣を刺していく。




まだ生きている者がいればトドメを刺してゆく。




全ての山賊を1人ずつ確認し終わると囚われていた馬車の人々の紐を切り開放した。







しかし、血まみれのイングマルの方が恐れられて人々は「悪魔だ!」と叫びながら逃げ散ってしまった。








イングマルは自分の馬とお金と荷物を集め結えて固定してゆく。








農家の娘だけがイングマルの側に寄ってきて文句をいった。




「そんなに強いんだったら、もっと初めから助けてくれたらよかったじゃないの!」。





涙目で男の腸を浴びて血まみれだった。







イングマルは「山賊全員が集まったところで倒すつもりだった」と言いたかったが何を言っても通じなさそうなので「ごめん。」と一言いっただけである。






そのまま馬に乗って行こうとしたが娘はイングマルを捕まえて離そうとしない。




手は震えていた。







「何処へ行くの?私たちと一緒に来て!」という。






「土では生きてはいけないみたい。」とイングマルは答えた。








娘は「そんなの努力すればいい。土で生きていけない人なんかいない。あなたは1人で生きていてはいけない。私が色々、全部教えてあげるから。」という。







イングマルはそのまま娘の手を振り払うと「一度剣を抜いたらやっぱり剣でしか生きてはいけないみたいだ。」そう言うと鍋、釜をがちゃがちゃいわせながら走っていってしまった。






娘は「待って!おいていかないで!」というが構わずイングマルは走り続ける。






やがて諦めたように「助けてくれてありがとう!」と叫んだ。










もう一度「ありがとう!」と辺りにこだました。






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