第26話 峡谷の戦い
逃げ隠れが基本方針だったがここまで馬を使って目立ってしまったので追いすがる相手を万全の構えで打つ。
ここならば不利な状態になればすぐ逃げ隠れできるので一人で対応できる。
このさき山中に逃げるにも一戦して相手に警戒心と慎重さを抱かせておくのが目的だ。
容易に手出しできないとなればこちらも時間稼ぎが出来動きやすくなる。
イングマルはこれほど心が晴れやかに迷いもなく戦いに挑もうとしている自分に少しおかしく感じた。
狩りの時は食糧のためと獲物を狩った。
いつでも迷いやかわいそうと思う気持ち、そういうものを押し殺していた。
しかし今回、戦いを前に気持ちが高揚している。
楽しい。
追いすがる人間を何の恨みもない、見たことのない人間を殺傷しようというのにまったく恐怖も躊躇もない。
同級生を殺害し追われているというのに。
自分は身も心も獣になってしまったのか?それとも人間というのはもともとそういう救われざる一面を持っているのか?。
そんな疑問が芽生えるだが今のイングマルにはよくわからなかった。
イングマルは防衛に適した地形に十数段にわたって仕掛けを作り、崖の上をすばやく移動できるよう道を作り新しい矢を作り刃物を研いで待ち構えた。
数日して騎馬の1団がやってきた。
山の入り口付近で溜まった集団はちょうど50名だった。
見れば前回の追手と違い、いろんな人が混ざっていた。
どうやら興味本位、遊び半分の者もいるようでなんだかお調子者もいるようだ。
ワイワイガヤガヤと何の恐れも警戒心もなくピクニック気分で山に入ってくる。
1時間ほど入ったところで岩陰を曲がり少し広くなったところにすべての集団が入り、先頭が曲がり角に差し掛かったところで崖の上からバリケードが倒れてきて道をふさいだ。
先頭は驚いて数人が落馬してしまった。
後の方では何事かと騒いでいるうち崖の上から石が落ちてきた。
すべての人がパニックになり、落馬したものが仲間の馬に蹴飛ばされたり踏まれたりしていた。
後ろに逃げようにも道が狭く、団子状態になったところに再び落石が襲う。
この場所の落石の仕掛けを全て使い切るとイングマルはクロスボウを取り出し集団の中でクロスボウや弓を持っていたものを見つけ、肩や腕足を正確に射て行く。
数発撃って次に移動し数発撃ってまた移動する、これを繰り返し1カ所にとどまることなくあちらこちらに移動して射て行く。
イングマルは落ち着いて正確に矢を放ち、巻き上げ機を回しながら次の目標を見定める。
放った矢はすべて命中させた。
どのくらい時間が経ったのか。
ほとんどのものは馬を捨てて走って逃げていった。
武器や装備のほとんどすべてがその場に残されたまま、死者はいなかったようで全員が大小の傷を負って逃亡した様だった。
イングマルは彼らの行く先をしばらく見定めていたがもうかなり向こうまで走って逃げていくのが見えた。
イングマルは谷に戻ると残された装備の中で使えるものは回収した。
新しいクロスボウも2丁手に入れた。
新しい矢も数百本手に入れることができた。
大量の食料を手に入れたのはイングマルにとって何より喜んだ。
馬も数頭傷ついて残っていたが幸い致命傷なのはおらず、手当てすれば無事だった。
イングマルは隠してあった馬を連れてきて石を運び、再び仕掛けを作り直す。
何日もかかって仕掛けを整え、今回の戦いで得たいくつかの改良もした。
新しい武器の調整、改良に明け暮れた。
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