第1213話(家持)更に贈りし歌一首 短歌を併せたり(3)

あしひきの 山桜花 一目だに 君とし見てば 我恋ひめやも

                      (巻17-3971)

山吹の 茂み飛び潜く うぐひすの 声をきくらむ 君は羨しも

                      (巻17-3972)

出で立たむ 力をなみと 隠りいて 君に恋ふるに 心どもなし

                      (巻17-3973)

三月三日、大伴宿祢家持。


山に咲く満開の桜の花を、一目だけでも、あなたとともに見ることができたなら、これほどまでに、あなたを恋しく思うことはなかったと思うのですが。


山吹の茂みから飛び回っては、美しい鳴き声を聞いておられるあなたは、何とうらやましいことでしょう。


外に出る力も失せたと、引き籠っているばかりで、あなたのことを思い続けているので、心の張りもないようです。


大伴家持は、ほぼ回復してきたとはいえ、まだまだ完全ではなかったようだ。

だから、最後の歌でも、不安を詠む。(再度の病状悪化を気にしたのだと思う)


いろんな歌論に基づく説もあるが、病気を経験してみると、一旦回復してみても、っやはり再度悪化の懸念は捨てきれない。

特に最後の歌には、そんな不安が詠みこまれている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る