第1208話たちまちに 枉疾に沈み( 2)

世の中は 数なきものか 春風の 散りのまがひに 死ぬべき思へば

                       (巻17-3963)

山川の そきへを遠み はしきよし 妹を相見ず かくや嘆かむ

                       (巻17-3964)

※そきへ:しりぞく方(へ)で、隔たったの意味。


右は、天平十九年の春の二月の二十日に、越中国守の館に、病に伏して、悲傷し、いささかにこの歌をつくりしものなり。


世の中とは、なんとはかないものなのだろうか、春の花が散る時期に紛れて、死んでしまうことを思えば。


山と川を隔てた遠い場所にいるので、愛しい妻に逢うこともできず、これほどまでに一人で嘆くことになろうとは。


家持は、実際は三月の初めに、この病気から快復する。

この歌を詠んだ時期が、実は回復の兆し(病状においては)ではないだろうか。

本当に死の苦しみなら、筆を持つ気力さえ、出ては来ないのだから。

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