第1194話平群氏郎女の越中守大伴宿祢家持に贈りし歌十二首(1)
平群氏郎女の越中守大伴宿祢家持に贈りし歌十二首
※平群氏郎女:伝未詳。家持が若い時(内舎人時代)からの知人。宮廷の女官。
十二首は、何回かに分けて、越中国に手紙の形で贈られた。
君により 我が名は すでに竜田山 絶えたる恋の 繁き頃かも
(巻17-3931)
須磨人の 海辺常去らず 焼く塩の 辛き恋を 我はするかも
(巻17-3932)
ありさりて 後も逢はむと 思へこそ 露の命も 継ぎつつ渡れ
(巻17-3933)
なかなかに 死なば安けむ 君が目を 見ず久ならば すべなかりけり
(巻17-3934)
貴方のために、私の浮名が立ってしまったという竜田山、その名のように、すでに関係を断ってしまった恋なのに、今さらになって恋しさが激しくなっているのです。
須磨の海人は、一時もその場を離れずに塩を焼くのですが、その塩のような辛い恋を私はしているようです。
とにかくこのまま我慢していれば、その後に、必ずお逢いできると思うからこそ、このはかない、露のような命をつなぎとめて、日々暮らしているのです。
これほど、逢うのが難しいのなら、いっそのこと、命を絶ってしまおうと、そのほうが楽になるとも思うのですが、貴方にお逢い出来ないまま、それも長い期間となるならば、何をどうしてよいのやら、全くわからないのです。
素直な、わかりやすい、遠く離れた恋人を思う歌である。
あまり歌に細工を施していないので、年も若い少女が詠んだ、そんな印象を受ける。
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