第1097話中臣朝臣宅守、狭野弟上娘子と贈答する歌(12)

さす竹の 大宮人は 今もかも 人なぶりのみ 好みたるらむ

                    (巻15-3758)

※さす竹:「大宮」にかかる枕詞。


たちかへり 泣けども 我は験なみ 思ひわぶれて 寝る夜しそ多き

                    (巻15-3759)


さ寝る夜は 多くあれども 物思はず 安く寝る夜は さねなきものを

                    (巻15-3760)


あの大宮人たちは、今でも、人をなぶりものにすることだけを、好んでいるのだろうか。


いろいろと思い出しては、事の結果に泣いてしまうけれど、私にはどうにもならないので、思い苦しみ、寝る寄りだけが多くなっている。


寝るという意味での夜は、いくらでもあるけれど、何も思うことがなくて、安らかに眠る夜など、何もないのです。


中臣朝臣宅守の歌。


政治犯として、都を追放された(誰かにはめられ、密告されたか?)恨みを詠む。

おそらく、密告した人間もわかっているのだと思う。

しかし、今となっては、どうにもならない。

悔やみ、悔しさだけが募り、安眠など何もない状況を嘆く。

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