第1069話筑前の国の志麻郡の韓亭にて (1)
筑前の国の志麻郡の韓亭に至りて、船泊りすること三日を経。時に夜の月の光皎々として流照す。奄ちにこの華に対し、旅の情凄暟す。各々心緒を陳べて聊か以て作りし歌六首
※筑前の国の志麻郡の韓亭:福岡市西区宮浦付近。船の停泊する所、宿舎。
大君の 遠の朝廷と 思へれど 日長くしあれば 恋ひにけるかも
(巻15-3668)
右の一首は大使。
※遠の朝廷:この歌の場合、勅命を持ち遠方に派遣される官僚の意味(公使)
筑前の国の志麻郡の韓亭に到着して、停泊すること三日。すると夜の月の光が、きらきらと周囲を照らしている。たちまちに全員の心は、この美しさのため、旅の情感で胸がいっぱいとなった。そこで各々に思いを陳べて作った歌六首。
大君の遠の官僚(公使)であるがために、その務めを精一杯尽くさなければならないとは思うけれど、これだけ長く旅を重ねると、やはり都が恋しくなってしまう。
遣新羅使の大使としては、勅命を尊重する立場。しかし、自分を含めて旅の仲間は、全員ホームシック。その心を代弁したものと思われる。
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