第1064話七夕に天の川を仰ぎ観て、各思ふ所を陳べて作りし歌三首
七夕に天の川を仰ぎ観て、各思ふ所を陳べて作りし歌三首
秋萩に にほへる我が裳 濡れぬとも 君がみ船の 綱し取りてば
右の一首は大使
(巻15-3656)
年にありて 一夜妹に逢ふ 彦星も 我にまさりて 思ふめらやも
(巻15-3657)
夕月夜 影立ち寄り合ひ 天の川 漕ぐ船人を 見るがともしさ
(巻15-3658)
秋萩にしっかりと染まった私の裳が濡れてしまおうとも、貴方の船の綱を手に取りたいと思うのです。
一年に一度だけ織姫に逢う彦星だって、私以上に恋の思いに苦しむ者なのでしょうか。
夕月夜に、彦星と織姫がしだいに近づいて、天の川を少しずつ進む彦星。その様子を見ていると、実にうらやましいのです。
遣新羅使たちにとって、一年に一度しか会えない彦星と織姫でさえ、うらやましい。
自分たちは、危険な船旅もあり、朝鮮に渡っても、身の安全が保障されているわけではない。(つまり、もう一度愛する妻に逢える保障がない)
「望郷の歌だらけではないか」と批判する人もいるけれど、新羅との問題があって、その交渉のための旅。出発前から交渉の失敗も予想され、気が乗らない旅(ましてや命の危険も否定できない)なのだから、この「マイナス思考の連続」も仕方ないと思うべきかもしれない。
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