第1063話筑紫の館に至り、遥かに本郷を望みて凄愴して作りし歌四首(2)
可之布江に 鶴鳴き渡る 志賀の浦に 沖つ白波 立ちし来らしも
(巻15-3654)
※可之布江:かしふえ。福岡市東区香椎の入り江と推定されている。
今よりは 秋づきぬらし あしひきの 山松陰に ひぐらし鳴きぬ
(巻15-3655)
可之布江の方角に、鶴が鳴きながら渡って行きます。志賀の浦に沖の白波が立ち寄せて来たのでしょう。
これからは、秋めいて来るようです。ここの山の松の木の陰で、ひぐらし蝉が鳴いていますので。
二首とも、滞在する博多の風景を詠んだ歌。
鶴が鳴きながら沖の白波を避けて渡るのは、自分たちの辛い船旅を、その鶴の姿に感じたもの。
秋めいたとの歌は、これから寒くなるのに、まだ博多にいて、新羅に到着するなど、まだまだ先のこと。平城京に戻り、家で待つ愛しい妻に逢えるなど、ほど遠い。
「ひぐらし鳴きぬ」は蝉だけのことではなくて、一日中、私も寂しさに泣いていると、読むべきかもしれない。
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