第1048話風速の浦に船泊まりせし夜に作りし歌二首

風速の浦に船泊まりせし夜に作りし歌二首

※風速の浦:現広島県東広島市安芸津町風早近辺の三津湾あたり。

      近くには、龍王島、藍之島、大芝島があるので、停泊に適している。


我がゆえに 妹嘆くらし 風速の 浦の沖辺に 霧たなびけり

                     (巻15-3615)

沖つ風 いたく吹きせば 我妹子が 嘆きの霧に 飽かましものを

                     (巻15-3616)


私がいないために、愛しい妻が嘆いているようだ この風速の沖辺にまで、霧がたちこめている。


沖を吹く風が激しく吹いてくれたなら、愛しい妻の嘆きの霧に、心ゆくまで包まれるのに。


霧が「愛する妻の涙」となる発想。

なかなか美しい。

これも古代にあって、現代では失われた表現の一つになる。

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