第1030話防人に 立ちし朝明の かな門出に

防人に 立ちし朝明の かな門出に 手離れ惜しみ 泣きし子らばも

                         (巻14-3569)


防人として出発した日の夜明け、門出の時に私が離れていくのを惜しみ、泣いていたあの子は、どうなったことだろう。


泣いていた「子」が、「恋人」の説と、「自分の子供」の説がある。


どちらであっても、旅立つ人、残される人、足が地につかなくなるほどの寂しさと思う。

帝の命令とはいえ、何故、こんな寂しい思いをさせるのか。

そんな思いを抱き、見知らぬ道を歩き続けた防人たち。

また、生きているか死んでいるかも、教えられず、ひたすら待ち続ける人たち。



防人は無事に帰って、待ち続けた人と、再会が出来たのだろうか。

1300年過ぎても、そんな思いを抱かせる切実な歌である。


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