第1027話剣太刀 身に添ふ妹を 取り見がね

剣太刀 身に添ふ妹を 取り見がね 音をぞ泣きつる 手児にあらなくに

                          (巻14-3485)

※剣太刀:身に添ふにかかる枕詞。

※取り見る:手に取って見るの意味。対象が妻なので、抱く、あるいは顔を見るのいみになる。

※がね:不可能の意味。


剣太刀のように、いつでも一緒に連れ添って来た妻を、抱くことも見ることもできなくなってしまい、声をあげて泣いてしまった。

子供ではないのだけれど。


朝廷の命令を受け、地方から都に出る、あるいは防人として旅に出る男の歌とされている。

そもそも引き離される寂しさがあって、その上、行く先も不安、残した妻も不安なのである。

この歌も、古代東国人の魂の叫びである。



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