第1025話しまらくは 寝つつもあらむを 夢のみに

しまらくは 寝つつもあらむを 夢のみに もとな見えつつ 我を音し泣くる

                            (巻14-3471)

※もとな:わけもなく、むやみに、いたずらに


ぐっすりと寝てしまいたいのに、貴方という人は、夢にだけは、いたずらに何度も出て来ては、私を声を出してまで、泣かせるのですね。


長い間の男の夜離れが続いているけれど、女は待つ気持ちを捨て去れない。

本当は眠りたいけれど、万が一、男が来た時に、寝ぼけ顔を見せたくない。

自らのミスで、男が来なくなってしまったら、ますます辛いのだから。

結局、寝ようとしても、深い眠りはできず、それどころか、男は夢にだけは、むやみやたらに顔を見せる。

その夢が覚めてしまえば、何も実態が無いのだから、悲しくて仕方がない。

男の薄情さと、それを待ち続ける自らの愚かさにも、声をあげて泣いてしまう。


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