第965話三諸の 神奈備山ゆ との曇り

三諸の 神奈備山ゆ との曇り 雨は降り来ぬ

天霧らひ 風さへ吹きぬ 大口の 真神の原ゆ

思ひつつ 帰りにし人 家に至りきや

                 (巻13-3268)

※真神の原:奈良県高市郡明日香村の飛鳥寺付近の原。甘樫丘東南に広がる平地。


反歌

帰りにし 人を思ふと ぬばたまの その夜は我れも 眠も寝かねてき

                 (巻13-3269) 


三諸の神奈備山のほうから、空一面に雲が広がり、雨が降り始めました。

霧も立ち込め、風も吹いて来ています。

こんな時に、大口の真神の原を、もの思いをしながら帰って行った人は、無事に家に着いたのでしょうか。


帰って行った人を心配して、その夜は、私は眠ることができませんでした。



天候が悪い中、朝帰りした男を心配する女の歌。

内容は、わかりやすい。

万葉集の中でも、名歌とする研究者も多い。




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