第957話天雲の 影さへ見ゆる こもりくの

天雲の 影さへ見ゆる こもりくの 泊瀬の川は

浦なみか 舟の寄り来ぬ 磯なみか 海人の釣りせぬ

よしゑやし 浦はなくとも よしゑやし 磯はなくとも

沖つ波 競ひ漕入り来 海人の釣り舟

                   (巻13-3225)

空に浮かぶ雲の影まで見える、この泊瀬川は、浦がないので舟が寄って来ない。

磯がないので、海人が釣りをしない。

たとえ浦がなくても、磯がなくても、沖から競い合って寄せる波のように、海人の釣り舟は、漕ぎ入って欲しい。


反歌

さざれ波 浮きて流るる 泊瀬川 寄るべき磯の なきがさぶしき

                   (巻13-3226)

さざ波が浮いて流れる泊瀬川は、寄って釣りができる磯がないので、本当に寂しいのです。


長歌では、釣り舟に来て欲しいと願い、反歌ではそんな磯がない、と嘆く。



海人からすれば、良い浦がなく、磯もないので、収穫は少ないかもしれない。

しかし、この歌の作者としては、それでも、もっと賑わって欲しい。

藤原京か平城京に都が移り、かつての泊瀬川の繁栄が衰えた時期と思う。


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