第613話児らが手を 巻向山に 春されば

児らが手を 巻向山に 春されば 木の葉しのぎて 霞たなびく

                 柿本人麻呂(巻10-1815)


巻向山に春が来たので、木の葉に覆いかぶさるように、霞がたなびいております。


「児らが手を」は、巻向山にかかる枕詞。

愛らしく恋する人の手を巻く、つまり枕にするとの意味。


単純な情景描写ではなくて、「児らが手を」を使っている以上、付近に住む恋人を意識したと思われる。

また、山に春霞がたなびく様子は、どちらかと言えば、ぼんやりとしたもの。

そのぼんやりに、「児らが手を」を序詞にすることによって、少しドキドキさせるようなうれしさを、感じさせることになる。


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