第513話言繁き 里に住まずば 今朝鳴きし

但馬皇女の御歌一首 一書にいはく、「子部王が作なり」といふ


言繁き 里に住まずば 今朝鳴きし 雁にたぐひて 行かましものを

                         (巻8-1515)


噂ばかりをするこんな里に住むことはやめて、今朝鳴いていた雁と一緒に、どこか別の里に飛んで行きたかったのに。


夫である穂積皇子の「今朝の朝明雁が音聞きつ」に対応した歌と理解されてきた。

題詞の子部王は(巻16-3821)の児部女王と同一人と思われる。


万葉集の異伝系統に子部王の歌として、

「言繁き 国にあらずば 今朝鳴きし 雁にたぐひて 行かましものを」があり、それに対応しているらしい。

子部王が但馬皇女の歌を再利用、あるいはまた、その逆もありうる。

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