第385話羇旅にして作りき(20)
夢のみに 継ぎて見えつつ 高島の 磯越す波の しくしく思ほゆ
(巻7-1236)
※高島:琵琶湖西岸の高島。
夢にだけは何度も見えるばかりなのです。高島の磯を越える波のように愛しい妻の姿が、実に途切れることがなく。
静けくも 岸に波は 寄せけるか これの屋通し 聞きつつ居れば
(巻7-1237)
岸辺に寄せる波は静かなようです。この旅の宿の壁越しに聞いておりますと。
高島の 安曇白波は 騒げども 我は家思ふ 廬り悲しみ
(巻7-1238)
高島の安曇川の白波が騒がしいけれど、私は家の妻を思うだけなのです。
この旅の仮寝が寂しいので。
大海の 磯もと揺すり 立つ波の 寄せむと思へる 浜の清けく
(巻7-1139)
大海原の磯を揺すり立つ波が、浜辺に打ち寄せようとしています。
その浜辺の何と清らかなことでしょうか。
対照的な歌が二首ずつ続く。
それぞれの前の歌は、家にいる妻などを思う望郷歌。
次の歌は、旅先の地を賛美する歌。
望郷の思いは消えることがないけれど、旅を続ける。
しかし、その合間には、旅先の地で美しい景色を賛美する。
その土地賛美によって、旅行の平安と、無事の帰郷を願ったのかもしれない。
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