第249話更に大伴宿祢家持の、坂上大嬢に贈りし歌
更に大伴宿祢家持の、坂上大嬢に贈りし歌十五首
夢の逢ひは 苦しかりけり おどろきて 掻き探れども 手に触れれねば
(巻4-741)
一重のみ 妹が結ふらむ 帯をすら 三重に結ふべく 我が身は成りぬ
(巻4-742)
我が恋は 千引きの岩を 七ばかり 首に掛けむも 神のまにまに
(巻4-743)
※大伴家持が、坂上大嬢に贈った十五種を三首ずつ紹介します。
夢の中での逢瀬は、実に苦しいものです。
驚いて手探りをしても、貴方を手に触れることはできないので。
貴方なら一重だけ巻く帯をさえ、三重に巻くほどの痩せた私となってしまいました。
※奈良時代、腰に巻くのは「ゆふ」、帯の両端は「むすぶ」。
私の恋は、千人がかりで引く大岩を、七つも首に掛けたような苦しさです。
そして、その苦しみの報いも、神の御意志にまかせるしかないのです。
夢で逢瀬をするけれど、驚いて目覚めても貴方はいないので、実に苦しい。
一重に巻くのが当たり前の帯を、恋に苦しみ、三重に回して結ぶほど、痩せてしまった。
その恋の苦しさは、千人が力を合わせて、ようやく引く大岩を、七つも自分の首にかけたような痛みと重さで、身動きもできないほどなのです。
しかも、その結末は、自分ではわからず、神の御気分しだいなのです。
※このようなわかりやすい恋の苦しみを詠んだ歌が十五種続く。
よくもこれほど、とその歌才には、感心するばかり。
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