第140話丹生女王の、太宰帥大伴卿に贈りし歌

丹生女王の、太宰帥大伴卿に贈りし歌二首


天雲の そくへの極み 遠けども 心し行けば 恋ふるものかも

                       (巻4-553)

古人の 飲へしためる 吉備の酒 病めばすべなし 貫簾賜らむ

                       (巻4-554)



空に浮かぶ雲の果てのように、こちらとは遠く離れている貴方ではありますが、私の心だけは、貴方に寄り添って、そちらにいるのです。

だから、これほど恋しく思うのですね。



昔からの知りあいが飲ませてくれた吉備の酒なのですが、飲み過ぎて酔いつぶれて苦しいのです、竹の敷物をいただきたいのですが。



丹生女王は誰かとは確定されていない。

ただ、推察するに、都にいて、大宰府にいる大伴旅人に恋い焦がれていたようだ。

また、昔からの知りあいは、おそらく大伴旅人のこと。

古来から銘酒の生産地として知られる吉備の酒を飲まされたこともあるかもしれないけれど、本当に酔ってしまった相手は、大伴旅人。

その大伴旅人を遠くから思って、酔いつぶれたというよりは、恋煩いとなり、貫簾(細い竹で並べて糸で貫き編んだ敷物)を欲しい、本音としては共寝をせがんでいるのかもしれない。


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