評語&後書き

陳寿評         

かれら五名について

評しておきたいと思う。


関羽かんう張飛ちょうひはともに「万人の敵」と

呼ばれていた。

まさに天下に名をとどろかせる

猛将と呼ぶにふさわしい。


関羽は曹操そうそうからの厚遇に報い、

張飛ちょうひは義でもって厳顔げんがんを釈放した。

共に士大夫たるべき

堂々とした振る舞いである。


しかしながら関羽は

そのプライドの高さゆえに傲岸不遜、

張飛は粗暴にして配下への配慮を

一切欠いていた。


これら短所が敗北に結びついたのは、

ごく当たり前のことである。


馬超ばちょうは自らの勇猛さを恃みに

反乱を起こした。

そのために一族を滅ぼされたのは、

実に残念なことである。

身一つにまで追い詰められながらも、

最後には安んぜられたことを、

まだ良かった、とするべきであろう。


黄忠こうちゅう趙雲ちょううんはともに壮強なる武人。

まさに劉備の牙、爪たる人物であった。

かん高帝こうてい劉邦りゅうほうに付き従った、

灌嬰かんえい夏侯嬰かこうえいに比すべきであろう。




評曰:關羽、張飛皆稱萬人之敵,為世虎臣。羽報效曹公,飛義釋嚴顏,並有國士之風。然羽剛而自矜,飛暴而無恩,以短取敗,理數之常也。馬超阻戎負勇,以覆其族,惜哉!能因窮致泰,不猶愈乎!黃忠、趙雲強摯壯猛,並作爪牙,其灌、滕之徒歟?


評せるに曰く:關羽、張飛は皆な萬人の敵と稱され、世の虎臣と為る。羽は曹公が效に報い、飛が義は嚴顏を釋し、並べて國士の風を有す。。然れど羽の剛けれど自ら矜じ、飛の暴にして恩無くば、短たるを以て敗せるを取さる、理數の常なり。馬超は戎を阻みて勇を負い、以て其の族を覆さる、惜しき哉! 能く窮せるに因ちれ泰んぜるを致さば、猶お愈よならずや! 黃忠、趙雲は強摯壯猛、並べて爪牙と作さること、其れ灌、滕の徒ならんや?

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