ちょーうん! 1   

せんせー、陳寿ちんじゅせんせー!

何なんすかこの趙雲ちょううん伝の薄さ!

おかしいでしょ! おかしいですって!


もうこりゃ、自分が「趙雲別伝」引いて、

がっつり事跡補完しちゃうっすよー!


 ○


趙雲、身長は約190センチ。でかい。

そしてその上背にたがわぬ、

ごっつい体つき、顔つき。


はじめ常山じょうざん郡の官吏として

取り立てられたっすが、天下には

大乱の兆しが辺りを覆ってます。

なので趙雲、義勇軍を結成、

公孫瓚こうそんさん軍に合流したっす。


ところでその頃、

公孫瓚と袁紹えんしょうはバチバチ。

特に常山郡は境界線近くでした。

なのでその辺の人間が

みんな袁紹に服従されたら困る、

公孫瓚、そんなことを考えてたわけです。


そこに趙雲が、人々を連れてやってきた。

そりゃ喜びます。


喜びのあまり、からかい半分に公孫瓚、

趙雲に向けて聞いたっす。


「其方の周りの人間は、

 ほぼ袁紹に属したようではないか。

 其方はいったい、何を血迷って

 彼らと道を別れたのかね?」


すると趙雲、答えたっす。


「天下が千々に乱れております。

 どの群雄の主張が正しいのかなど、

 我々にはわかりません。


 それよりも恐ろしいのが、

 いつ戦に巻き込まれ、殺され、

 奪いつくされる目に

 遭ってしまうのか、という事。


 片田舎の我々にできることなど、

 民を愛してくれる群雄の側を頼る、

 くらいのことしかできません。


 私的に袁紹殿をないがしろとし、

 将軍に好意を寄せているから、

 と言う訳ではないのです」


こうして公孫瓚の配下になった趙雲。

この頃、劉備りゅうびもまた公孫瓚の下に。

二人、すぐ意気投合したみたいっす。

「納」は贈り物とかなんでしょうかね。


けどそれから間もなく趙雲、

兄の死亡を受けて故郷に

帰ることになったっす。


劉備、直感したっす。

「あ、公孫瓚とこには戻んねえな」

って。


なので趙雲の出立を見送り、

手ずから別れの言葉を。

すると趙雲も返したそうっす。


「その徳ある御恩は、決して忘れません」


そんなんだから後日に趙雲、ぎょうの町にて、

袁紹の配下だった劉備と合流。

しばらくはベッドも同じくして語り倒し、

今後の振る舞いについて

すり合わせてったみたいっすね。


ここから趙雲、袁紹の目を盗んで

同志をかき集めたそうっす。

その数は数百人。


そうして、彼らを引き連れ、

劉備と共に荊州けいしゅうに入ったそうっすよ。




雲別傳曰:雲身長八尺,姿顏雄偉,為本郡所舉,將義從吏兵詣公孫瓚。時袁紹稱冀州牧,瓚深憂州人之從紹也,善雲來附,嘲雲曰:「聞貴州人皆原袁氏,君何獨回心,迷而能反乎?」雲答曰:「天下訩訩,未知孰是,民有倒縣之厄,鄙州論議,從仁政所在,不為忽袁公私明將軍也。」遂與瓚征討。時先主亦依讬瓚,每接納雲,雲得深自結讬。雲以兄喪,辭瓚暫歸,先主知其不反,捉手而別,雲辭曰:「終不背德也。」先主就袁紹,雲見於鄴。先主與雲同床眠臥,密遣雲合募得數百人,皆稱劉左將軍部曲,紹不能知。遂隨先主至荊州。


雲別傳は曰く:雲は身長八尺、姿顏は雄偉、本郡に舉ぐるる所と為り、義從や吏兵を將い公孫瓚に詣づ。時に袁紹の冀州牧を稱せるに、瓚は深く州人の紹に從いたるを憂うや、雲の來附せると善くせど、雲を嘲りて曰く:「貴が州の人は皆な袁氏に原したると聞くに、君は何ぞ獨り回心し、迷いて反り能いたるや?」と。雲は答えて曰く:「天下の訩訩せるに、未だ孰れの是なるかを知らず、民に倒縣の厄有あらば、鄙州の論議、仁政の所在に從いたる、袁公を忽せとし明將軍に私せるを為さざりたるなり」と。遂にして瓚と征討す。時に先主は亦た瓚に依託し、接せる每に雲に納れ、雲は深く自ら結託せるを得る。雲は兄を喪いたるを以て、瓚に辭し暫し歸したれば、先主は其の反りたらざらんことを知り、手を捉えて別れ、雲は辭して曰く:「終にては德に背かざるなり」と。先主の袁紹に就けるに、雲と鄴にて見ゆ。先主と雲は同床にて眠臥し、密かに雲を遣わせ合募し數百人を得、皆な劉左將軍が部曲を稱せど、紹は知りたる能わず。遂にして先主に隨いて荊州に至る。

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